【第10回】CSVからCSAへ データインテグリティも踏まえたFDAの新ガイダンス動向
本記事は、当初11月7日付で掲載の予定でしたが、事務局内での調整の都合で掲載が遅れました。記事中に既に過ぎてしまった外部行事の予告が含まれておりますが、当該箇所はそのままで掲載しております。
読者の皆様、執筆者の的場様に、お詫び申し上げます(GMP Platform事務局)
CSAガイダンス最終化版発行後の動き
世界的な参加者の広がりをもつビジネス目的のSNSであるLinkedInを主情報源として、2025年9月24日にCSAガイダンスが公開された後に業界内等でどのような反応と動きがあったかを、筆者が知る範囲で最初にご紹介する。これは筆者流の表現であるが、従来から「CSA推進派」と「CSA批判派」があったことを念頭に置いて以下をお読みいただきたい。
まず、「CSA推進派」が息を吹き返したのは当然である。
FDAのCDRHは、2011年から業界と協調して”Case for Quality”という医療機器に関する品質マネジメントの向上活動を実施していた(https://www.fda.gov/medical-devices/quality-and-compliance-medical-devices/case-quality)。そこでは”Medical Device Innovation Consortium” (MDIC)(https://mdic.org/)という団体がCase for Qualityを同団体の推進するプロジェクトの一つと位置付けて活動し、2018年に総括資料を公開している(https://mdic.org/wp-content/uploads/2022/05/CFQ.pdf)。現在のMDICのウェブサイトにはもはやその活動は存在しないが、2015年から特にCSAを扱う”FDA – Industry CSA Team” (FICSA)という小さなチームが形成され、LinkedIn上のグループとして今もそれが残っている(https://www.linkedin.com/groups/12435486/)。最終化版ガイダンス公開後、そのFICSAのメンバーの一人であるKhaled Moussally氏が、自分のコンサルティング会社であるCompliance Group Inc.のWebページを使って” Virtual Town Hall - FDA Final CSA Guidance Released: The Journey, Changes, & What It Means Now”と銘打ったバーチャル会議を2025年11月13日午前11時(米国東部標準時)から開催するとアナウンスし、そこで主要メンバーから回答される質問を募っている(https://www.complianceg.com/fda-final-guidance/)。ここで筆者が納得できないのは、上記のMDICの総括資料はソフトウェアベンダーであるGreenlight Guru社が全面的に名前を出して執筆し、またKhaled Moussally氏がCSAを題材としFDAの現役職員がスピーカーとして名を連ねる自社のイベントをおおっぴらに開催するのをFDAが黙認(?)してきたことである。
一方で、「CSA批判派」もCSAが最終化されたからと言って黙ってしまったわけではない。この連載の【第8回】でご紹介したR.D.McDowall氏は同じオンラインジャーナルの11月末公開号に” Dracula rises from the grave: CSA lives?”と題した論文(ただし仮題)を掲載するそうである。ドイツの医療機器業界での仕事に長く携わってきたベテランコンサルタントのOzan Okutan氏はCSAガイダンスの最終化の前から痛烈な批判的論文、”The road to more quality is paved with bad guidance – A critical appraisal of FDA’s Computer Software Assurance Draft Guidance or the answer” (https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7148284391771836416/)を発表していたが、最終化後の2025年10月16日付で新たな” Regulatory Misstep: Why the FDA’s CSA Guidance Still Conflicts with Law and Standards — The Final Act II or Just the Last Sigh?” (https://www.linkedin.com/pulse/regulatory-misstep-why-fdas-csa-guidance-still-conflicts-ozan-okutan-i0sme/)を出している。その主な論点は、今回のガイダンスは、FDAが進めている医療機器の品質マネジメントシステム規制(QMSR)に関する、従来の米国独自の21 CFR Part 820規則からISO 13485:2016を全面的に採用した規則への法制面の移行措置と矛盾するというものである。筆者も不勉強であり今回改めて知ったのであるが、医療機器のISO 13485:2016では短い表現ではあるものの、品質マネジメントシステムで使用されるソフトウェアのバリデーションの基本原則が既に示されており、これに従うことが第一となる。この点に関して、例えばインターネット上のこの記事、”ISO 13485 software validation process: everything you need to know; By Aaron Hoare; October 13, 2023”(https://www.ideagen.com/thought-leadership/blog/iso-13485-software-validation-process-everything-you-need-to-know)が良い参考となろう。「(つまり、ISO 13485のバリデーション規定に全く言及しておらず、またそこに書かれていないことを細く書き足している)CSAガイダンスは体系的に矛盾しており不要である」という意見である。
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