品質に関する承認申請資料について【第10回(最終回)】

2016/01/06 製造(GMDP)

 最終回は技術移管についての考え方を述べる。外国からの導入品の場合、製品上市に向け、申請時期や承認予定時期を踏まえ分析法等の技術移転、導入先との品質等に関する取り決め締結も重要になる。
 技術移管/技術移転とは、製造及び分析に必要な技術情報・知的財産を移転側から被移転側に引き渡すことでありTechnical transferあるいはTechnology transferと称されるものである。

1. Technical Transferについて
 本稿では、分析法の移管について述べるが、technical transferは、単に文書の移管/移転だけではなく、契約合意内容である分析試験法が再現できるようにノウハウや留意点を含めた移管とすることが肝心であり、場合によっては、外国製造業者においてトレーニングを受けることも含まれる。
 国内製販が自ら分析法バリデーション(再バリデーション)を行い、外国製造業者での結果と比較して検証することもtechnical transferとしてあり得るが、ここでは除外する。
 Technical transferに際しては、外国製造業者で分析法バリデーションが済んでいることが前提であり、移転側(外国製造業者)と被移転側(国内製販)とにおける室間再現性を検証することが目的となる。
 実際に技術移転で検証する試験項目については、難易度による区別をすべきであり、例えば 外観や確認試験のように定性的な試験、純度試験や溶出試験、定量といった定量/半定量的な試験では取り扱いが異なる。外観や確認試験の移転までをあらためて実施する必要はないとの考えも成り立つ。あるいは、過去にtechnical transferを受けたものと類似の組成を有した品目、同様の分析法とみなせる場合も必要ないとの考え方もあり得る。
 プロトコールには、次に示した内容を盛り込むのが一般的である。
 

● 試験法の研究開発計画書
 ・製法・試験方法の手順書
 ・規格及び試験方法の設定経緯・根拠
 ・分析法バリデーション結果
 ・物理的化学的性質・安全性情報
 ・技術移管計画書・報告書形式
 ・目的・試験項目・試料・試験内容
 ・担当者・責任者・役割分担
 ・試験結果の判定・評価・報告方法
 ・承認方法


 試験方法は、熟練した試験担当者が問題なく試験出来るレベルでの記載が必要である。
 移転側(外国製造業者)と被移転側(国内製販)で実施した試験結果は、最終的に例示のような形式にまとめるようプロトコールの別紙に規定しておくのが良いであろう。試験結果の判定基準について、あらかじめ規定しておくのが原則である。
 試験終了後は通常、被移転側(国内製販)があらかじめ規定した判定基準に則り評価し、報告書をとりまとめる。変更や逸脱があった場合は、妥当性につき十分検討して記録する。あらかじめ設定した判定基準に適合した場合、被移転側の適格性が確認できたと判断する。基準に適合しない場合は、原因究明、是正措置が必要になるのは言うまでもない。

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執筆者について

江森 健二

経歴 ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株)神奈川研究所 分析研究室、ファイザー(株)レギュラトリーオペレーション部、ヤンセンファーマ(株)CMC企画部を経て、商社 信頼性保証部に勤務。外資系CRO Independent Senior Consultant、CMC薬事全般に係る相談を頂いているPRD Consulting Group代表。
専門:CMC薬事、分析
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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