ドラッグリポジショニング/リプロファイリング(DR)における知財/特許の課題【第6回(最終回)】

11.知財戦略の対象と課題
(1)既存特許の活用と対策
 既承認医薬品については、殆どの場合、それに関係する特許が存在します。従って、それらの既存特許(以下、「先行特許」と記載)とDRによる既承認医薬品の再開発とは医薬品事業の展開上で相互に影響を与える関係にあり、その関係は知財戦略の重要な視点の1つとなります。
 DR開発医薬品とも関係する先行特許(既承認医薬品に関係する特許に限られるものではありません。例えば製剤特許のように、異なる薬物であっても、利用する技術が同一である場合があります)の実施権が自己/自社に属する場合は、DR開発医薬品が製造販売承認されたことによって先行特許の期間延長が可能になります。例えば、自社が所有する先行特許が有効成分に係る物質特許であれば、同一有効成分を含有するDR開発医薬品の承認によって特許権の存続期間を延長することができ、DR開発医薬品であっても一定期間物質特許による保護が可能になります。当初の特許期間(特許出願後20年間)を超えて延長された期間における特許による保護の対象はDR開発医薬品の用途における有効成分(化学物質)の実施(特許に係る技術/製品の製造、販売、宣伝などを行うこと)に限られるものですが、特許期間の延長によって、既承認に係る効能の医薬品とDR開発に係る効能を有する医薬品とを同一の化学物質(原末)によって製造できること、両医薬品の規格が同じであれば同一形態の医薬品として提供できる可能性があることなどの事業上の優位性確保が知財戦略によって実現できると考えられます。
 一方、DR開発医薬品とも関係する先行特許(既承認医薬品に関係する特許に限られるものではありません)の実施権を有さない場合は、それがDR開発医薬品の事業化に支障を生じることが考えられ、特許の譲受、実施許諾など、事業化に関連する特許の実施権を確保する必要が生じます。あるいは、特許侵害を巡る係争に備えた対策を講じることになります。知財戦略としての観点では逆の立場に立たされるわけです。

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