日本の製薬業界の未来を考えたい【第5回】
■GMP査察の国際調和
最近、「世界のGMP組織」に関する講習会をリモートで受講する機会がありました。その内容を聞きながら、私がGMP業務に携わっていた頃と比べ、国際的な枠組みが大きく進展していることを実感しました。当時は、国際ハーモナイゼーションやPIC/S加盟に向けた議論がようやく始まったばかりで、GMP査察の国際調和をどのように進めるか、ようやく検討段階に入ったところでした。
振り返れば、欧州では当時からすでにこうした議論が進んでいたように思います。東西の政治的な違いはあったものの、欧州の国々は地続きで結ばれ、ECやEUといった国家共同体の発想が根付いていました。このため、GMPのハーモナイゼーションを自然な流れとして受け入れられる土壌があり、当局間の柔軟性や協調性が早い段階から醸成されていたのだと感じます。
一方、日本は当時、二国間のMRA(Mutual Recognition Agreement:相互承認協定)の締結を中心に進めており、各国と担当者を派遣し合い、査察レベルの相互確認を丁寧に積み重ねていました。こうした取り組みが、日本とアメリカをヨーロッパ主導で成熟したPIC/Sというスキームへと最終的に合流させる基礎になったと言えるでしょう。
日本はアメリカとの同盟関係が強く、制度面でも文化面でもアメリカの影響を受けやすい側面があります。一方でヨーロッパは、PIC/Sという仕組みを早期に立ち上げ、米国FDAとの相互認証を目指して議論を進めてきました。歴史的にはまず西ヨーロッパ諸国が2000年前後の約10年間でPIC/S参加し、その後東ヨーロッパ諸国が続き、さらに日米韓台が加わった流れを見ると、時間的順序を盛り込んで整理するとアメリカFDAは2011年にPIC/Sに加盟し、さらに日本・台湾・韓国の各当局が2013〜2014年にかけて相次いで加盟しています。PIC/Sがヨーロッパ主導で成熟してきた仕組みであることがよく分かります。
医薬品だけでなく当時医療機器GMPが存在したのはご存じでしょうか。かつて両者が同じ「薬事法」という法律の枠組みで規制されていたことが背景にあります。両者は「効能・効果」を標ぼうする医療用途の製品という共通点を持つ一方で、医療機器は“道具“としての性格が濃く、医療機器業界の方は当時この「GMP」という名称に違和感があったと聞き及んでおります。
外観や構造が一般製品とほとんど変わらなくても、医療用途で使用されれば「医療機器(医療用具)」として扱われ、QMSの対象となるのも特徴です。
医療機器分野では、GHTF(Global Harmonization Task Force)を中心に、ISO 13485を基盤とした品質マネジメントシステムの国際共通化が検討されてきました。日本の医療機器GMPも制度創設当初は医薬品GMPに近い形式でしたが、国際整合の流れの中でISO 13485の構造・思想を取り込み、さらに米国FDAの21 CFR 820(Quality System Regulation)に含まれる設計管理(Design Control)といった医療機器特有の要件も導入されました。その結果、現在の日本の医療機器GMP(QMS省令)はISO 13485および21 CFR 820と整合し、国際的に共通性の高い制度へと発展しています。
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