新型肺炎による閉鎖期間の生活

 
2019年12月、中国中部の武漢では新型肺炎の患者が確認された。新型コロナウイルスによるものであるが、ウイルスに対する情報はまだそろっていないので、政府と市民は十分な注意を支払っていない。中国旧正月の直前(1月20日前後)、数百人の患者の存在および人から人への伝染が確認されることで、政府は初めて本気で対応し始めた。

武漢は重要な都市であり、湖北省の省都である。面積は8494平方キロメートル、居民は約1400万人の巨大な都市である。昔から、長江中流の要衝であり、水上交通の中心の一つでもあったので、古来から南北勢力必争の地となった。現在でも「九省通衢(四川、陝西、河南、湖南、貴州、江西、安徽、江蘇、湖北省と通じる交通の要所の意)」という別称があり、鉄道は中国全国につながっている。北は北京、南は広州、東は上海、西は成都を経由しチベットに繋がっており、毎日武漢(漢口駅、武漢駅、武昌駅計3つの高速鉄道駅がある)を経由する高速列車は670本程あり、北京、上海を強いて1位である。経済的に中国中部の中堅都市として、2019年のGDPは約4.5兆人民元(約66.3兆円)であると言われている。武漢日本商工会のデータによると、2019年1月時点で、ホンダ、日産、新日鉄住金、名幸電子、住友電装、ブリジストン、理研等、武漢に進出している日系企業は計152社となる。

感染者が多く確認され、特殊な交通要所にある以上、春節(大晦日23日)大移動の一番忙しい時期に感染を全国へ拡大することを防ぐために、政府は22日の夜中に23日から武漢が閉鎖されることを公表した。翌日の24日、武漢の近くにある都市である、黄岡、孝感、隋州は確認感染人数が多いため、閉鎖された。その後28日まで、湖北省にある13市は全部続々閉鎖された。筆者は武漢の漢口駅から新幹線で2時間半の位置にある、湖北省の宜昌に住んでいる。その後、宜昌は25日から閉鎖が始まることとなった。

まず、高速道路、空港、列車等が全部止まり、宜昌市の入出が出来なくなった。ただし、宜昌市内での生活は普段の通りであった。スーパーへの買い物はまだできる。デパート等も営業している。ただし、中国では、23日大晦日の前後に家族全員揃って会食したり、24日の新年の始まりに親戚の家に訪れ挨拶したりする習慣があるが、人が集まることでウイルス感染のリスクが増えるため、今年は多くの家庭は自ら全部控えることとなった。新年の挨拶は、電話又は中国の一番流行っているSNSであるWeChatで行った。

その後、感染者数が増えるため、対策が強化され、閉鎖も強化していった。数日後、2日ごとにそれぞれの家庭は1人が住んでいる小区(中国では住宅が集団を成して連なり、生活に必要な施設・店舗を伴った市内の居住地区にいる。通常、入り口には守衛が設けられ、人と自動車の出入りが管理され、コミュニティ以下の管理エリアとなっている)から必要な生活物資を買い物することはできた。しかし、徐々に各小区から出ることも禁止されていった。このころから、ネットでは「家でごろごろするだけで、社会に貢献できる日がくる」という冗談も流行っている。冗談でありながら、実際にウイルス感染の拡大に役立っている。「でも、買い物はどうするの?どのように生活しているの?」と皆さんは不思議に思うかもしれないが、政府、コミュニティーの方、ボランティアの助けで、不自由しながらも、穏やかに中国の社会で生活することはできた。
 
 

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