【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<168号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2019.4.15】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー

こんにちは 
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

さて、今回も、FDA(米国食品医薬品局)の製造品質局から、製薬会社向けに出されたウォーニングレター(4件)について見ていきたいと思います。
ウォーニングレターに挙げられている指摘内容には、どこの会社様にも起こりうることが含まれていますので、是非参考にして頂ければと思います。


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最近のウォーニングレターの概要  
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です。
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■WL:320-19-13 インドの製造所の査察(2018/7/30~2018/8/3)でみつかった医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2019/2/28付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

1.貴社は医薬品の安定性を評価し、適切な保管条件や使用期限を決定するために安定性試験の結果を使用するための文書化された試験プログラムを制定してそれに従うことを怠った。XXのような医薬品の微生物特性(例:微生物の総数や好ましくない微生物を含まないこと)を試験することを怠ったので、貴社の安定性プログラムは不適切である。さらに貴社は、有効成分のレベルを判断するための分析方法を示した安定性の情報を使用しなかった。貴社は回答の中で、微生物の成長に関するサンプルの試験を含む安定性の研究の改訂手順を示した。しかし、改訂された安定性プログラムの手順や、安定性の研究から得た微生物の試験結果を含んでいないので、貴社の回答は不十分である。また、貴社の回答には、使用期限内にある全てのロットの保管サンプルの微生物試験を実施する計画が欠けている。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ。
・安定性プログラムの妥当性を保証するめの包括的で独立したアセスメメントと是正処置
・予防処置(CAPA)の計画
貴社のCAPAの計画には、これに限定されないが、以下の情報を含めるべきである。
 ○貴社の安定性プログラムについて述べた修正された標準操作手順(SOP)
 ○方法を含む安定性の情報
 ○出荷許可前の容器の密閉システムを保証するための製品の安定性の研究
 ○保管期間が正当であるか判断するために製品の代表ロットが毎年追加されるような継続的なプログラム
 ○各工程で試験される指定された特性
・使用期限内にあるアメリカ市場内の製品の安定性に関する回顧的リスクアセスメント
これらの医薬品が、それらが持つとされている品質特性が使用期間内を通して維持されることを保証するために、化学的特性と微生物学的特性の両方に関する保管サンプルの試験を含むCAPA計画を含めよ。

2.貴社の品質管理部門は、貴社で製造した医薬品が、それらが持つ、または、持つと表示されている同一性、含量、品質、または/かつ純度を持つことを保証するために設計された、変更を含む、製造手順や工程管理に関する文書をレビュし承認していなかった。
A)貴社は医薬品の製造工程を適切にバリデートすることを怠った。例えば、貴社には、以下のバリデーションが欠けていた。
・ロット全体の均質性の適切な証明(例:特定の場所にあるXXのタンクのサンプルの欠如)
・貴社のXXの充填作業の適切なバリデーション
プロセスバリデーションの目的は、工程が一貫して質の高い製品を供給することができるという科学的なエビデンスを確立することである。工程内の原材料や製品のサンプリングと試験は、結果をモニタし、医薬品の性質のばらつきの原因になりうる製造工程の性能をバリデートするための管理手順を必要とする。サンプルはロットを代表するもので、適切な統計的信頼度を提供し、あらかじめ定められた規格を満たさなければならない。
貴社は回答の中で、均質性と均一性の試験に関する新しい手順を開発したと述べたが、貴社の全ての医薬品のプロセスバリデーションの包括的なレビュを含んでいなかったので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ。
・貴社の現在の管理状態を判断しバリデーションの不備を確認するための、製造工程の包括的なレビュ
貴社のCAPAの計画を含めよ。
・製造や包装工程で一貫して適切な製造の基準やパラメータを満たすように、全てのばらつきのもとを特定し管理するデータ駆動型で科学的に妥当なバリデーションプログラムバリデーションプログラムには、これに限定されないが、装置の使用目的に対する適合性の評価、投入する原材料の品質の保証、各製造工程の能力と信頼性の判断と管理が含まれる。
・不十分なバリデーションの影響を受けた、使用期限内にあるアメリカ市場内の製品の回顧的リスクアセスメント
B)貴社のXXシステムの適切な設計と管理が欠けいてた。我々査察官は、貴社のXXシステムが常に循環されていないことを発見した。XXの化学的試験に関するローデータは、査察中利用できなかった。更にXXシステムのサンプリング計画は不十分だった。製造に使用されるXXや装置の洗浄が、XXに関する化学的な基準・USP(米国薬局方)・貴社の局所医薬品の微生物学的な基準を満たすことは絶対不可欠である。
貴社は回答の中で、SOPはサンプリングの頻度を含むよう改訂されたと述べたが、使用するサンプリングポイント、頻度、結果を裏付けるための改訂された手順やエビデンスの提出がなかったので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ。
・貴社のXXシステムの設計、管理、維持に関する包括的で独立したアセスメント
・XXシステムの設計、管理、維持の修正に関する包括的なCAPAの計画
・貴社の各製品の使用目的に応じてXXを製造するこのシステムを保証するための、微生物作用とアラートリミット
・貴社のXXシステムのバリデーション報告
システムの設計に対して行われた改善と、継続的な管理と維持のために行われた改善の概要を含めよ。
・使用期限内のアメリカに販売された全ての製品のロットの品質に対する、XXシステムの欠陥の潜在的な影響に関する詳細のリスクアセスメント
もし不備がみつかれは、貴社がとろうとしている、顧客への通知や製品の回収のようなアクションを明記せよ。

3.貴社は、装置の洗浄とメンテナンスに関する文書化された手順を制定し、それに従うことを怠った。
貴社の製造装置に関する洗浄バリデーションのプログラムは不十分である。
例えば、2014年1月29日付の報告APPL/CVPD/010は、XXからXXのタンAPPL/PROD/02の洗浄バリデーションを文書化していた。報告は、XXの水の洗浄で、XXタンクは、XXppmの許容基準より低いXXのサンプルを得たと結論を出した。
しかし、報告は、XXppmの許容基準より高い化学物質の存在を示した値を記録していた。更に、2018年2月2日にXXの製造後にXXタンクから収集した水のサンプルは、化学物質の規定の洗浄許容基準が不合格だった。査察中、貴社は、この不合格は調査されなかったことを示した。このタンクは異なる医薬品を製造するために使われているので、交叉汚染のリスクがある。
貴社は回答の中で、新しいシステムと容器の洗浄手順をバリデートするつもりであると述べたが、他の装置の洗浄バリデーションの評価を含まず、完了のタイムフレームに欠けているので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ。
・複数の製品の製造に使用される製造装置の洗浄手順、訓練、バリデーションを評価するための包括的な計画
・洗浄手順が効果的であることを保証するための、貴社の洗浄バリデーションの戦略に関する科学的な論理的根拠
・最悪のケースの状態を取り込んだ洗浄バリデーションの手順の改訂のサマリ
サマリには、これに限定されないが以下の情報を含めるべきである
 ○最高の毒性の医薬品の評価
 ○洗浄溶剤の中で最低の溶解度の医薬品の評価
 ○洗浄を難しくする特性を持った医薬品の評価
 ○洗浄が最も難しい場所の装置の拭き取り
・新しい製品、工程、装置に関する洗浄手順の検証やバリデーションに関する適切なプログラムが整っている
ことを保証する最新のSOPのサマリ
・貴社の不十分な洗浄プログラムの影響を受けた、使用期限内にあるアメリカ市場内の製品の回顧的リスクアセスメント
●品質部門の権限
この文書内の重大な調査結果は、貴社の品質部門がその権限と責任を十分に発揮していないことを示している。貴社は品質部門に、適切な権限と、その責任を果たし一貫して製品の品質を保証するために十分なリソースを提供しなければならない。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、貴社の作業を評価し、貴社がCGMP要件を満たす手伝いをするために21CFRの211.34章に示す適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
※未承認新薬、虚偽表示に関する指摘の文章は省略します。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、これらの違反を調査し、原因を判断し、再発を防止し、その他の違反を防止する責任がある。
貴社が全ての違反を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認するまで、FDAは、貴社の医薬品製造業者としてのいかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する。
出典: https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm633150.htm

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