【米国初のDSCSA不履行ウォーニングレター】ASTROM通信<169号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2019.5.7】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~


こんにちは 
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ゴールデンウィーク明けの初日ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて、今回は、2013年11月に出されたDrug Supply Chain Security Act(DSCSA)の要件の不履行として、FDA(米国食品医薬品局)からはじめて発行されたウォーニングレターを取り上げます。
DSCSAは、アメリカの消費者が偽物、盗品、汚染品、その他の有害な薬にさらされることを防ぐために、医薬品のサプライチェイの危険の可能性を検知し除去するのための法令です。

DSCSAについて:
https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/DrugIntegrityandSupplyChainSecurity/DrugSupplyChainSecurityAct/

このウォーニングレターは、DSCSA違反としてはじめて発行されたということで、注目されています。
アメリカに医薬品を輸出されている製薬会社様は内容を是非確認いただければと思います。また、DSCSAは、昨年12月に日本で発出されたGDPガイドラインの目的に近いため、アメリカに輸出されていない製薬会社様も参考にしていただければ幸いです。


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ウォーニングレターの概要  
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■アメリカの製薬会社の本社の査察(2018/6/25~2018/7/3)及び配送センタの査察
(2018/6/26~2018/6/29)でみつかった連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)の確認要件の重大な違反に関する、2019/2/7付けウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は貴社が所有または管理している通知対象の全ての医薬品を識別し、
  隔離することを含む、違法製品に対する要求された対応を怠った。
2.貴社は疑わしい製品を隔離して調査することを怠った。
3.貴社は疑わしい製品の調査の記録や違法製品の処理の記録を少なくとも
  6年間保管することを怠った。

●実例1
2016年9月と10月に、貴社は、貴社の取引相手であるR社から、R社の異なる3薬局で、貴社により販売されたと報告のある違法な製品を受領したと通知された。
はじめに、2016/9/1にR社から、ミシガン州ミルフォードの薬局で、M社により製造されたオキシコドン塩酸塩(NDC0406-8530)100錠入りとラベルが貼られたボトルを受け取ったと通知された。ボトルのシールは破れ、ボトルにはオキシコドン塩酸塩が入っていなかった。ボトルの中身は、ナプロキセン15錠に変わっていた。R社は貴社に、この製品は貴社との取引を通じて受け取ったと報告した。
M社は、このオキシコドン塩酸塩について、Form 3911で“ボトルの中の錠剤が異なる錠剤だった”とFDAに違法製品通知を提出した。
R社のミシガン州ウォーターフォードにある薬局も、M社により販売されたと報告のある違法な製品を受領した。薬局は、オキシコドン塩酸塩100錠入りとラベルが貼られたボトル1個を受け取ったが、シールは破れ、オキシコドン塩酸塩は入っていなかった。そのボトルの中身もナプロキセン15錠に変わっていた。R社は貴社に、この製品は貴社との取引を通じて受け取ったと報告した。2016/9/15に、R社は、消えた錠剤に関して、メールで貴社に警告した。M社は、このオキシコドン塩酸塩について、
Form 3911で“ミシガン州ウォーターフォードにあるR社の薬局は、M社オキシコドン塩酸塩30mgの、開封されたボトルのシールは破られ、オキシコドン塩酸塩30mgの錠剤100錠がなくなった。A社で製造されたナプロキセンナトリウム220mgのジェネリック医薬品Aの錠剤15錠がボトルの中にあった”とFDAに違法製品通知を提出した。
2016/10/6、R社のミシガン州ウォーレンにある薬局も、貴社により販売されたと報告のある違法な製品を受領した。その薬局はオキシコドン塩酸塩のボトルを5つ注文し、受け取ったボトルのうちの3つは、オキシコドン塩酸塩が全て持ち去られていた。これらの3つのボトルには、ナプロキセンと塩酸シプロフロキサシンのさまざまな組み合わせが入っていた。M社は、これらの製品について、“3つのボトルでオキシコドン塩酸塩30mgの錠剤100錠が全てなくなり、別の錠剤が入っていた”とForm 3911でFDAに違法製品通知を提出した。3件の事件に関する貴社の調査は、これらのパッケージが不正に加工されたというエビデンスに欠けていることと、これら3件のR社の薬局の近さにより、オキシコドン塩酸塩はおそらく貴社の所有または管理中に他の製品にすり替えられたと判断した。
これらの事件は、貴社が連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)582(c)(4)の要件に従うためのシステムを持つことを怠ったことの例となっている。R社から違法製品通知を受領後、貴社は、所有または管理している、通知対象の全製品を確認する対応が求められていた((582(c)(4)(B)(iii))。
それから、貴社は、それらの製品が解決するまで、所有または管理しているそれらの製品の販売用の製品からの隔離 ((582(c)(4)(B)(i)(l))、所有または管理している違法製品の処理((582(c)(4)(B)(i)(ll))、貴社が所有していない違法製品を処理するために取引先を手助けするための妥当で適切な措置をとること((582(c)(4)(B)(i)(lll))、24時間以内にFDAとそれらの違法医薬品を受け取ったかもしれない全ての直接取引先への通知((582(c)(4)(B)(ii))が必要だった。また、貴社は、違法製品の譲渡・処理の記録を少なくとも6年保持する必要があった((582(c)(4)(B)(v))。
貴社はオキシコドン塩酸塩のこれらのボトルに関する調査は実施したが、582(c)(4)に基づいて重要な義務を果たしたことを証明することはできなかった。例えば、貴社は通知された全ての違法製品について、同じロット番号またはNDC(National Drug Code: 全米医薬品コード)を持つ製品を探すなどにより確認したことや、それらの製品を隔離したことを示すことができなかった。同様に、貴社は、同じロット番号またはNDCの製品を受け取ったかもしれない直接取引先に通知したと証明
することを怠った。貴社の調査で、オキシコドン塩酸塩はおそらく貴社の配送センタで別の製品に置き換えられたことに気付いていたので、これは特に不安を感じさせる。これ以外にも不安に感じさせることとして、FDAが貴社のサンフランシスコ本社を査察中、貴社の代表は、中身が盗まれたり変わったりしたことを含む事象は、社内ではDSCSAの確認事象として扱われないと述べたことである。
実際、DSCSAは、“信頼できるエビデンスが、それが偽物であったり、変えられたり、盗まれたりしたと示す製品”は、違法製品に含めると明確に定義している。最終的に、貴社は、これらの違法製品の譲渡・処理の記録を提出しなかった。

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