ゼロベースからの化粧品の品質管理【第63回】
―品質保証における官能検査の役割―
前々回(第61回)では、品質保証に必要な規定や手順書の整備について解説しました。その中でも、化粧品において官能検査は特に重要な管理手法であることに触れました。化粧品は工業製品でありながら、最終的な価値判断の大部分を「使い心地」や「香り」「色調」といった感性品質が占めています。したがって、物性値だけでは評価しきれない “人が感じ取る品質” を適切に管理する官能検査は、製品の市場競争力やブランド価値に直結する極めて重要なプロセスです。
ISO 5492では、官能品質を「感覚器官で知覚される製品特性」と定義しています。この定義は、官能評価が科学的に体系付けられた正式な分析手法であることを示しており、経験や勘に依存するものではありません。ISO 8586(官能評価者の選定・訓練)やASTM E253などの国際標準でも、官能評価は再現性・客観性・統計的妥当性を確保すべき分析手法として位置づけられています。
今回は、化粧品の品質保証において、官能検査をより科学的かつ効果的に活用するために、その種類・特性・実施のポイントを整理し、現場や開発で活かしやすい形でまとめました。
① 識別試験(Difference Test)
② 評価試験(Descriptive Analysis)
③ 順位法・採点法(Ranking / Rating)
④ 簡易官能検査(Routine Sensory Check)
⑤ パネル試験(Expert or Trained Panel)
どの試験が適切かは、目的により異なります。開発段階・工程保証・最終製品検査での使用目的を整理したうえで、適合する試験法を選ぶことが品質保証の質を大きく左右します。
① 主な用途
● 類似原料の誤納入の防止
● 化粧水や乳液混合工程での分離兆候の早期検出
● 異物混入や劣化臭の有無の判定
● 評価者は複数名(最低3名以上)で実施する
● テスト環境(照明・温湿度・サンプル温度)を統一する
識別試験は短時間で実施でき、異常を早期に検出できるため、工程保証において最も重要な官能チェックの一つです。
評価試験は、乳液やクリーム、ファンデーションなどの 質的な官能特性を数値化する 試験です。
具体的には以下のような特性が対象になります。
① 評価対象例
● のび・付着性・密着感
● 香りの強度・広がり
● 肌なじみや浸透感
多くの企業ではリッカート尺度(5段階や7段階)を用いてスコア化し、処方比較やロット評価に活用しています。
② 実例:乳液開発での活用
乳液の開発では、「さっぱり~しっとり」のバランスや「保湿感」「浸透性」「べたつき」など複数項目をパネルが繰り返し評価し、処方の方向性を定めます。
一般消費者モニターのアンケート結果を併用することで、
専門パネルの分析値 × 消費者の感性指標
という両面からのバランスが取れ、ブランドイメージに合った最適な処方を導き出すことができます。
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