【第16回】マイナスからはじめる生物統計学

多重比較補正

1. 検定は「1回勝負」が基本
 統計的検定(t検定など)は、基本的に「1つの仮説」を検証するために作られています。「A群とB群に有意な差があるか?」という1回の勝負なら、通常は有意水準5%(0.05)の危険率(間違って「差がある」と言ってしまう確率)で判定します。しかし、「A群、B群、C群」の3つがある時、「AとB」「BとC」「AとC」のように何度も検定を繰り返すとどうなるでしょうか?多重比較による「補正」とは、この問題を解決するための方法になります。
 事例:ここに「1」が出たら「当たり(有意差あり)」というサイコロがあるとします。
 これを1回振って当たる確率は1/6ですが、何度も振り続ければ、当然いずれは「1」が出ることになります。パチンコなどのギャンブルでも、打ち続ければいつかは当たることになりますが、それまでにどれほどの資金を投入するかは定かではありません。そこまでの資金が枯渇するまでに当たれば、さらには投じた資金が回収できれば何ら問題はございませんが、多くの場合は回収できないまま負債が増え続けるわけです。それをさらに取り返そうとして、負債が増え続ける「負のスパイラル」こそが、依存症の副作用なわけです。
 同様なことが統計的検定でも起きます。検定を繰り返せば、「本当は差がないのに、偶然差がある(有意)と判定される確率」が雪だるま式に増えてしまうのです。

2. どのくらいの「危険率」なのか?
 例えば、3つのグループ間の差を比較するために3回の検定を行ったとします。1回の検定で「間違えない確率」は95%(0.95)です。これが3回連続で起きる(つまり、全体として1回も間違えない)確率は(0.95)3≒0.857程度になります。つまり約86%程度であり、逆に言えば、「少なくとも1回は間違って『差がある』と言ってしまう確率」は、14%程度 に跳ね上がります。4群間で6回の検定を繰り返せば26%に、5群間で10回の検定を繰り返せば40%にもなります。これは本来の有意水準である5%を大きく超えています。これを元の5%に抑え込むために行う補正が「多重比較補正」です。

3. 多重比較補正の具体的方法
 多重比較の補正方法には多くの手法がありますが、ここでは最も代表的な3つを紹介します。おそらく、この2つがあれば多くの場合は切り抜ける(?)ことができるかと思いますが、あくまで状況に合わせて使い分けることが重要です。

3-1. Bonferroni法(ボンフェローニ法)
 これは最も単純な方法で、今すぐにでも用いることが可能です。

 

 

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