「コーティングとは」【第3回】
はじめに
「コーティングとは」[第2回]では、通気式コーティング装置の操作における留意点、微粒子コーティングおよびナノ粒子コーティングについて解説した。
福森1)は、種々の処方の噴霧液を用いて調製したコーティング製剤の凝集傾向を比較した。53~63μmの乳糖をヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液でコーティングすると、80%以上は凝集。HPCに凝集防止剤として塩化ナトリウムを添加しても凝集の抑制には限界がある。一方、Poly(アクリル酸エチル(EA)/メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(HEMA))の高分子のナノ粒子水系分散剤でコーティングすると、凝集を顕著に抑制することができる。これは、溶液系のように乾燥と成膜が同時に起こると微粒子の凝集を避けることが出来ないが、吸気温度以上の軟化温度を有する高分子ナノ粒子の付着・積層をコーティングで行った後、別途加熱によって成膜させる方法では凝集を抑制できると報告している。
[第3回]では、新規コーティング技術の開発として連続スプレー法によるシュガーレス薄層糖衣に関して、そして、錠剤フィルムコーティングと糖衣錠コーティングのトラブルとその対策について解説する。
1.新規コーティング技術の開発
糖衣コーティングとフィルムコーティングの長所をもち、短所を解消したコーティング技術の開発が望まれている。そこで、大森ら2)は、糖衣の長所を活かし、短所を改善した新規コーティング法としてシュガーレス薄層糖衣の開発を立案した。計画するにあったては、シュガーレス薄層糖衣のコーティング法として、汎用性および生産性に優れたフィルムコーティングと同じ連続スプレーミスト法で行うこととした。まず、はじめにシュガーレス薄層糖衣の基剤の選択を行った。基剤としては、シュガーレス薄層糖衣層を精製白糖の糖衣層と同様に防湿性のある均一なコーティング層とすることのできる基剤(糖アルコール)であることが必須である。そのために基剤が具備すべき特性は、高水溶性、低吸湿性、高結晶析出性、低粘着性である。エリスリトールは、これらの特性を具備しており、シュガーレス薄層糖衣の基剤として最適であった。
エリスリトール水溶液でのコーティングでは、コーティング時間は短縮できるが、コーティング収率が低かった。そこで、シュガーレス薄層糖衣の基本処方を確立するため検討を進めた。その結果、シュガーレス薄層糖衣処方をエリスリトール、結晶セルロース、タルク、酸化チタン、アラビアゴム末および精製水とした。本層をビルドアップコーティング(BC)層と呼ぶ、さらに錠剤を艶のある外観と防湿性を付与する目的で、BC層の上にシロップコーティング(SC)を行った。SCは、エリスリトール単味では強度が弱かったので、結合力があり、吸湿性が低い、外観に光沢を与え、滑性のあるポリエチレングリコール6000を配合し、強度の向上、防湿性、外観の光沢化を図った。さらにヒドロキシプロピルセルロースによるアンダーコーティング(UC)を素錠とBC層の間に施し、シュガーレス薄層糖衣層への薬物の混入を防ぎ、外観変化の防止を図った。
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