【2025年11月】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~
執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話」
第21話:継続と習慣化
10月6日(2025年)、今年のノーベル生理学・医学賞が制御性T細胞を発見された、大阪大学免疫フロンティア研究所特任教授の坂口志文さんに授与されるとの報道がありました。この快挙にメディアの取材が殺到する中、報道陣から“座右の銘”は?と問われ、教授は、高尚な四字熟語ではないが、あえて言うならば、“一つ一つ”、ということですと回答され、目標に向けて少しずつ地道に努力を続けることが、大きな業績の達成につながることを示唆されました。
また、2日後の8日には、京都大学高等研究院特別教授の北川進さんの、多孔性金属錯体の開発に対する同化学賞の受賞が発表され、日本人にとって嬉しいニュースが続きました。北川教授も報道陣のインタビューに対し、“運・鈍・根”の大切さなど、坂口教授と同様、研究が思うように進展しないときもそれに屈せず、あきらめず根気よく研究を続け、次のチャンスを待つことの重要性を述べられていました。そうした心構えと行動を継続することより、はじめて、時がきたらその“運”を受けとめ、ものにすることができると繰り返し述べておられました。
“継続は力なり”、ということわざがあります。科学研究に限らず、何ごとも継続することは容易ではありませんが、上記のように根気よく努力を続けることなしには何ごとも成就できないこともまた真理です。スポーツや芸術などもそうですが、学業や世の中のあらゆる仕事も継続することによって、はじめて、その面白さや意義の理解が進み、その先には望ましい結果も期待できます。しかしながら、継続することの大切さは頭では理解できても、実行するのはそう簡単ではないことは誰もが経験ずみです。
一方、“継続”と似ている概念に“習慣化”という言葉があります。意味としては、“習慣化”は日常生活や仕事の中で、好ましい、或いは重要とされる意義のある行動を、日常の中でごく自然に繰り返し行えるようにすることであり、これに対し“継続”は、単にある行動を続けることを意味します。しかし、どちらも“続けて行う”という意味合いは共通し、続けることの大切さや、これを実現するための方法などを説明する際に使用され、この二つの言葉の関係性は、“継続するためには習慣化することが大事である”、或いは、“習慣化することによって継続することが可能になる”、といった文脈により表現されます。
科学研究や音楽などの芸術、またスポーツなどの領域においては、その人の強い好奇心や目的意識、また、生来の適性などにより、“継続”のモチベーションが維持されやすい傾向がありますが、一方、仕事や健康管理など日常生活に関する場合は、継続するのが難しいケースが少なくありません。そういった場合は先ず“習慣化”することに留意し、習慣化により“継続”を可能にすることを考えるとよいでしょう。ここで、“習慣化”を如何にして実現するかがポイントになるわけですが、単に本人の意志の力だけでは限界があることから、これを可能にするための何等らかの工夫が求められます。では、習慣化するためには本人の意志のほかに何が求められるのでしょう。
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