【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第5回】

調査の実際③ ― ラップアップミーティングと指摘事項への対応

数日間にわたる調査の集大成が、最終日の「クロージングミーティング(ラップアップ)」です。そして、そこで提示された指摘事項への事後対応ちこそが、企業の改善能力を示す真の正念場と言えるでしょう。

1.ラップアップミーティング:最後の対話の機会
ラップアップは、単なる結果報告の場ではありません。指摘事項が正式に文書化される前の、最後の重要なすり合わせの機会です。

  • 事実誤認はその場で正す: 調査官が提示する観察事項(指摘事項候補)に、事実誤認や解釈の違いがある場合は、その場で根拠資料を示し、明確に説明・反論してください。ここで曖昧な態度を取ると、誤解に基づいた指摘がそのまま確定してしまう可能性があります。
  • 指摘の重み(ニュアンス)を把握する: 指摘事項は最終的に「重度」「中程度」「軽度」などに分類されますが、ラップアップの段階では未確定です。しかし、調査官の言葉のニュアンスから、どの事項が特に問題視されているのかを察知し、今後の対応の優先順位付けに活かすことが重要です。
  • 責任役員の同席は必須: 経営層が指摘事項を直接聞くことで、その後の改善活動(特に予算や人員の再配分)へのコミットメントが得られやすくなります。これは、品質保証部門を中心としたGMP組織が迅速に改善を進める上で極めて強力な後押しとなります。

2.指摘事項への対応:改善は調査終了の瞬間から始まる
指摘事項書は、通常、調査終了後10営業日(約2週間)以内に交付されますが、改善活動は指摘事項書を待たずに、調査が終了した瞬間から開始すべきです。

  • 計画的かつ迅速な改善:
    • 重度の不備: 15日以内の改善が求められるなど、極めて迅速な対応が必要です。行政とも密に連携し、全社を挙げて改善に取り組まなければ、行政処分に繋がる可能性があります。
    • 中程度・軽度の不備: 通常30日程度の期間内に改善計画・結果報告が求められます。必要に応じて根本原因を究明し、実効性のある是正・予防措置(CAPA)を盛り込んだ計画を策定します。
  • 「良い回答」と「悪い回答」:
    • 悪い回答例: 「今後は注意します」「教育訓練を徹底します」といった精神論や、単に手順書を改訂するだけで終わる回答は、本質的な問題解決から目を背けていると見なされる可能性が高いです。
    • 良い回答例: 必要に応じてなぜなぜ分析などを用いて根本原因を特定し、それに対する具体的なシステム改善策を提示する回答は、組織として問題を捉え、継続的な改善に取り組む姿勢を示すものです。
  • 進捗管理の徹底: 改善計画を提出した事項については、次回の調査で必ずその進捗と改善結果として報告した指摘事項も含めてその有効性が確認されます。「計画倒れ」は、管理能力の欠如を示すものとして大きな指摘に繋がる可能性があります。

調査は、指摘事項書を受け取って終わりではありません。指摘を真摯に受け止め、迅速かつ的確な改善を実行し、それを次なる品質向上に繋げていくプロセス全体が、当局との適切なコミュニケーションを行う上で必要不可欠です。


執筆者のGMPコンサルタント 田中が下記セミナーを担当します。
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