医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第67回】
国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本製薬企業に求められる事業所内閉所空間の管理」
原薬保管庫は停電時閉所空間リスク有り?
1.製薬企業のあるべき姿
サプライチェーンの信頼性確保が必要な時代に、国内の製薬工場ではConfined Space(閉所空間)がハザードリスクとなり得ることについて、意識が低く放置されている例が多く見られます。最近では、埼玉県のある交差点でトラックが、道路地盤の劣化によって公共の下水道に落下し、硫化水素ガスが充満していて救助の作業員が下水道管内に入ることが出来ず、問題になりました。この事故をニュ-スで見ていた人たちは、この事故が公共の道路であり下水道であることから、他人事のような立場で道路の崩落に注目していたと、筆者は想像しています。製薬工場で働く人々は、自分の会社に閉所空間があり、同様の硫化水素ガスが充満している場所がハザードとして、リスクアセスメントとその対策をしているのだろうかと、心配していた人もゼロでは無いと信じています。さて、このConfined Spaceで3種のガス(酸素濃度・硫化水素・可燃性ガス)を作業前に入室せず測定することが、最も重要な管理事項となります。従って、どこがConfined Space(閉所空間)に当たるのかを特定し、Permit System(許可証管理システム)で厳しく管理し、必要な事前測定や安全管理上の立ち会い者など、不可欠な要件を満たしていることを許可証にデーターで示します。そして、責任者の許可サインを得て初めて、作業開始指示を現場作業責任者が出せる仕事です。重要要件は以下の項目です。
- 3種のガス濃度が基準値以下であること。
- 出入りや足場など、安全作業に必要な要件が整っていること。
- 無菌室、高活性ハザード室、原料保管室は3種のガス濃度測定のほかに、取扱い原薬の曝露量を事前に測定する。
- 作業前点検結果とPermit Systemに、責任者(担当部署課長、HSE管理責任者)のサインをもらう。
このように、閉所空間に定期的に又は非定期に出入りするには、Global Standardや社内規定でPermit Systemにより管理され、運用されていることが重要です。又、このリスクは人の命に関わる為、Global Standardや社内規定は責任の所在を会社のTop Managementにする事が求められます。ところが、サプライチェーンマネジメントが出来ていない企業では、外注の工事会社へ閉所空間の修理やメンテナンス作業を委託した場合に、自社の社員では無いからと安全管理を業者さん任せにする会社があるようです。しかし、社員のみならず外注工事であっても、自社事業所内での作業にて事故や怪我が発生した場合、治療費の保険処理はそのVictim(けが人)の所属会社の保険処理になりますが、管理責任は発生場所事業者が問われることがあります。
サプライチェーンマネジメントでは、工事会社の従業員が電気工事や建築工事、修理工事を行っています。まずはこれらの人たちの安全を守るために、安全のリスク低減を図り、原料曝露リスクの高いところで仕事をしている人には、封じ込め設備や保護具によってリスク低減を図ります。このようにStandardに適合している度合いを評価することで、事業所のHSEレベルを高め、事業所内で働くすべての人の健康安全と地球環境保護を担保して、健全な業務を行うことの出来る、国際社会に貢献できる会社としての成長を目指すのがあるべき姿です。
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