エッセイ:エイジング話【2025年9月】
公害とTOC
昭和の時代に環境汚染が顕著になり、公害(こうがい)という概念が定着しました。公害には2つ、①大気汚染と ②水汚染があります。
①大気汚染は広い範囲へ汚染が広がる面がありましたが、②水汚染は限られた閉鎖系水域(へいさけいすいいき)での汚染が見付かり、富栄養化現象(ふうえいようかげんしょう)として、具体的に琵琶湖や瀬戸内海伊勢湾において、藻や赤潮が異常発生する目に見える現象として表れました。

昭和の時代には、富栄養化現象とは別の水汚染も発生しましたが、こちらは現象として直ぐに現れず、特定の工場からの汚水が原因であることが広く認識されるに時間を要しました。
水域の魚を食べた被害者が、裁判を起こし公害として認定される迄には、隠ぺい工作も在った負の歴史を経験しました。最終的に裁判により工場排水と汚染の因果関係が明らかと成ったものの、特定の工場は被害者を救済するに多くの時間費用を有し被害者として認定に至るに長い道のりも在りました。
後に、国と熊本県は特定の工場へ救済資金を斡旋する措置を行いました。被害者認定と救済措置は現在も続いています。(詳細な内容は環境白書各論「平成3年度公害の状況に関する年次報告」平成4年5月刊にあります。)
一方で、富栄養化現象の方は、工場排水や生活排水がいったん近辺の河川へ流れ込み、その流域下に位置する湖や海域へはっきりと目に見える現象だったことから、直ぐに公害対策が始まった時間軸の違いがありました。
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さて一方で、水域での有機汚染度合はBOD:Biochemical oxygen demandが代表的な指標でした。ところが、BODにより検出できない有機汚染をも検出できる指標としてTOCが登場した面が有りました。
なぜなら、微生物分解性が低い有機汚染はBODで検出出来ないからであり、洗剤成分など微生物が分解できない有機体炭素も検出できる指標としてTOCが位置付けられた背景が在りました。
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