「コーティングとは」【第1回】

はじめに
 コーティングの目的は広範にわたっていて、服用性の改善では苦味や臭いのマスキング、識別性の向上、薬物の安定化、放出性の制御などが挙げられる。これらは、コーティング装置の進歩とフィルム基剤の開発、そして製剤技術の三位一体で成し遂げてきた。また、人や環境の問題もあり、コーティング溶剤も有機溶剤系から水系に20年以上かかって必然的に移行してきた1)
 コーティングは、全4回を予定しており、【第1回】では、コーティングの目的とコーティング法、錠剤コーティングにおけるポイントおよび糖衣錠とコーティング錠のプロセスの比較、【第2回】は、通気式コーティング装置の操作における留意点、微粒子コーティングおよびナノ粒子コーティングについて、【第3回】で新規コーティング技術の開発として連続スプレー法によるシュガーレス薄層糖衣に関して、そして、錠剤フィルムコーティングと糖衣錠コーティングのトラブルとその対策、【第4回】では、錠剤コーティングプロセスにおける品質を制御する因子および錠剤コーティングにおけるコーティング時間の短縮とスケールアップについて解説する。

1.コーティング
1.1コーティングとは2)
 コーティングの目的には、①苦味を有する薬物、不快な臭いや味を有する薬物のマスキングによって、服用を容易にする、②酸化や加水分解によって薬物が変質するのを防ぐ、③コーティングによって薬効発現の調節をする、などが挙げられる。
 例えば、腸溶性コーティング、持効性製剤、複効性製剤などの作用機構の差によって大別され、これらの目的を満足させる目的で錠剤、顆粒剤などに糖類、高分子等を用いたコーティングが施される。

1.2コーティング法3)、4)
 コーティングを施した剤形には、糖類をコーティング基剤とした糖衣錠。高分子物質を基剤に用いたフィルムコーティング。また、製剤からの薬物の溶出を制御した腸溶性製剤、徐放性製剤などがある。
 糖衣錠は素錠にショ糖と添加剤から成るサブコーティング層、スムーシング層、ショ糖に識別を目的として、色素を加えたカラーリング層、色素はスムーシング層に添加されることもある。結合剤としては、古くはゼラチン・アラビアゴムが、現在ではこの他に、ポリビニルピロリドンやプルランなども用いられている。そしてフィニシング層、ポリシング層で構成されている。
 日本では、コーティング装置として1928年に初めてコーティングパンが製作された。そして、1965年以降に通気式乾燥コーティング装置の使用が可能となった。この装置では二重構造とし、内側にパンチング孔を設け、パンの内側から外側へ、転動混合床を構成する錠剤間の間隙をぬって乾燥空気を流通させ、通常のパンに比べて、乾燥効率は約1.5倍から2倍に増大する。しかしながら、本来透気や透湿の抑制を目的とする糖衣錠のカラーリング層のショ糖結晶の層をいかに緻密に形成させるかが大きな問題である。パンコーティングによるカラーリング層と通気式のハイコーター(フロイント産業)によるそれを走査型電子顕微鏡で観察したところ、後者の層構造は明らかに、前者のパンコーティングに比較してポーラスであった。そこで、通気式乾燥コーティング装置の使用にあたっては、その製造のソフトに十分な注意をはらう必要がある3)
 フィルムコーティング錠が新しい剤形として登場して、約半世紀が経過した。フィルムコーティング錠の出現は、錠剤コーティング装置の進化に大きな影響を及ぼした。それまで主流であった糖衣錠とは異なり、コーティング液を装置内で速やかに乾燥しなければならないので、コーティング装置としては大きな乾燥能力を必要とした。また、糖衣コーティングと比較して、フィルムコーティングは短時間で製造されることから、従来の装置よりも優れた攪拌混合性が要求される。さらに、コーティング液が有機溶剤系から水系に移行したことで、より乾燥能力の大きなコーティング装置が必要となってきた4)

2.錠剤コーティングにおけるポイント5)
 フィルムコーティングの製造条件としては、フィルムコーティングの均一性に加え、コーティング中の乾燥条件に留意し、最適化を図る必要がある。製剤品質に影響を及ぼすフィルムコーティングの製造要因の模式図を図1に示した。

 図1.フィルムコーティングの製造要因

本図は、池松康之「連載 固形製剤の製造における単位操作と製剤の品質 
第6回 フィルムコーティングの基礎とトラブルシューティング」
PHARM TECH JAPAN,34,No.7,75-82P(2018)の図2 製剤品質に影響を
及ぼすフィルムコーティングの製造要因(模式図)(79P)を転載した。

 フィルムコーティングの均一性に関して、コーティングは、コーティングパン内の錠剤の混合性(錠剤の挿入率、錠剤の形状/錠剤の転がり、パンの回転数、バッフルの形状等)およびフィルムコーティング液の送液条件(液組成・濃度、送液速度、噴霧条件など)に影響する。また、乾燥条件は、コーティングパン内の送風条件(風量、給気温度・湿度、排気温度等)、送液条件に加え、パン内の錠剤挿入率とスプレーノズル間の距離などに影響する。

 

 



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