玄人好みの空調技術【第3回】
第3回 クリーンルームのいろは①
工場空調では、よく「クリーンルーム」と言う言葉を聞くと思います。
では、クリーンルームとはどんな部屋でしょうか。ここでもう一度復習しておきましょう。
みなさん、空調玄人なので、そんなこと知っとるわ!と言うかもしれませんが、しばし、私の話を聞いてください。
まずは、クリーンルームの定義。
クリーンルームの定義はJISとISOで明確に定義されています。
JISもISOもほぼ一緒ですが、参考となるJISは以下の通りです。
JIS Z 8122:コンタミネーションコントロール用語
JIS B 9920-1:2019 クリーンルーム及び関連する制御環境
JISの原文を見たい方は、日本産業標準調査会(JISC)のWebサイト内「JISの入手閲覧方法(https://www.jisc.go.jp/jis-act/reading.html)」をご参考ください。
JIS Z 8122で示される定義では、クリーンルームとは、清浄度以外にも、持ち込まれるモノの清浄性や、温湿度、室圧などの室内環境条件まで管理されている空間と示されています。また、JIS B 9920-1の定義のほうにも同様のことが注記されています。
ということは、クリーンルームというのはただ単に塵埃が超少ない部屋じゃないってことですね。
ここで、クリーンルームの目的を考えてみましょう。
そもそもクリーンルームは、人が快適に過ごすために作られる空間ではないですよね?
マンションで「クリーンルーム」を宣伝してる物件なんか見たことないし。
クリーンルームは、工場、すなわち、モノを作るところに構築される空間です。
では、クリーンルームでの生産ということで、医薬品と半導体について考えてみましょう。

最初に医薬品。
医薬品製造ではGMPで、グレードA、グレードB、グレードC など製造環境が分類されています。
よくグレードAはISOクラス4相当とか文献で見かけますが、これは清浄度だけのことで、グレードAには浮遊菌や付着菌などの生菌数や、気流方向、空間への介入方法、常時モニタリングなど、その他にも管理する条件がたくさんあります。
それはなぜか?
グレードAは注射剤など、人の体に直接注入する製品を作る環境に適用されます。
前回でも書かせてもらいましたが、医薬品の製造では製造環境の菌管理はとても重要です。ですが、その空間に菌がゼロであることを証明できない。だから清浄度だけではなく、定期的に生菌数が決められた条件内に収まっていることを管理しないといけない。これに製造される医薬品の性状などに応じた温湿度や、外部から室内(空間)に菌(≒塵埃)が入ってこないようにする室圧の管理とか、HEPAフィルターの管理などが必要で、気流方向も管理されています。
清浄度だけでなく、菌などの衛生管理上の条件も含めたのが、医薬品製造に求められるクリーンルームということです。

次に半導体。ここでは前工程について言及させてもらいます。
半導体製造では、医薬品のようにグレードで分類された管理は要求されません。
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