再生医療等製品の品質保証についての雑感【第77回】
第77回:細胞製造の品質マネジメントシステム (7)
~ 製造環境(構造設備)の設計で大事なもの (1) ~
はじめに
製造プロセスの設計の考え方では、ここまでに、「細胞イベント」におけるプロセスパラメータ管理に影響する、部分工程の組み合わせ(プロセスアプローチ)を理解し、細胞の内なる乱れ(細胞製造性)を理解し、各々のインプットを「整える」ことが重要であるとお話ししました。これにより、最終製品は同等性/同質性を有する品質を達成できると考えます。では、適切な品質マネジメントシステムを構築するには、次に何をすればよいでしょうか。
● 生産を実施するために最も必要な要素
ここまでお話しした内容で、製品の「品質が達成できる」ようになりますが、当然ながらまだ、生産を実施する、「品質が実現できる」には至らないです。なぜ当然なのかと言えば、もちろん、ここまでのお話しだけではGMP三原則の要素を満たしていないからです。GMP三原則を全て満たさなければ、バリデーションを達成することはできません。
GMP三原則の要求とは、本コラムを読んでいただく方は当然知っていることですが、人による間違いの排除(手順化)、汚染および品質低下の防止(条件遵守)、および、それらに必要なシステムの構築(管理監督)の三要素です。ここまで、汚染防止は別途として、細胞イベントに関わるプロセスを明確する手順化を要求し、品質低下に影響を及ぼすインプットや細胞製造性に係るプロセスのばらつきを抑える条件管理についてお話ししましたが、まだシステムの構築については議論してません。
均一かつ安定した品質を実現するためには、生産に関わる最適な製造システムの設計が不可欠です。システムの構築はGMP運用における最重要課題であり、構造設備(適格性評価)の設計と強い関連が生じます。
● システム構築と構造設備設計の一丁目一番地
製造システムの構築には、その手順・条件の遵守のため、適切な構造設備の設計が必須となります。ここで、最も重要なポイントは、初めに、「何をどれだけ生産するのか」を明確にできることです。具体的には、製品(手順・条件)と生産数(年間バッチ数)となります。筆者は、これを定めずに構造設備設計やバリデーションマスタープランを作成しても、GMPを実施できるとは考えておりません。「何をどれだけ生産するのか」は、システム構築の要であり、GMP(≒品質マネジメント)実施の一丁目一番地に相当すると考えます。
なぜこれが基点になるのかと言えば、製品と生産数は、人と物の動線(物量)の要求を明確にし、機能仕様の適格性の判断を「定量的」とするのに不可欠な要素だからです。あまりにも常識なお話しで恐縮ですが、製造では、年間のバッチ数は予め決まっている(生産計画を有する)ことで、いつ、どれだけの量で人(作業者)と物(工程資材)が入出するのかが決まります。構造設備の設計は、本来これに対しての要求仕様が求められますし、製造コストを最適化するために動線を最適化します。また、構造設備のモニタリングは、生産数に応じた稼働率と機能仕様での上限に対して管理地や逸脱値を設定し、トレンドを管理しますが、運用が「定量的」でなければ適切な管理ができないと考えます。
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