PIC/S GMPガイドラインAnnex 11の改訂版ドラフト内容の注目点【第2回】
今回のガイドラインの改訂版ドラフトの薬事規制的位置づけと法的拘束力
改訂内容の詳細に入る前にそもそもこれらガイドラインの薬事規制的位置づけとその法的拘束力について簡単に考察しておく。結論からいうと、これらはあくまでもガイドラインであり法令そのものではないため、欧州連合(EU)加盟国/米国/わが国においてこれらが直接的に法的拘束力を持ち、その遵守が強制されるものではない。このため、英語による文章では各記載項目について、助動詞shallまたはmustではなく原則としてshouldが用いられている。しかし、各国によって、実際面での適用のされ方が異なっているため、それらに対応する必要のある読者には注意が必要である。
<欧州連合(EU)加盟国の場合>
まず、PIC/Sのガイドラインとしてではなく、EudraLex Volume 4に含まれるGMPガイドラインの扱いとなる。それを自国の国全体レベルの法令の中で引用して取り入れるのは各国の判断である。その際には必ずしもすべてをそのまま取り入れる必要はない。連邦制の国家においては、国家全体レベルの扱いがさらにそれを構成する共和国または州の法の中に落とし込まれ、実際の法執行を行うのはそれらの単位である。筆者が調べた範囲では、ドイツの場合、EU-連邦共和国-連邦州の法体系の中でEudraLexのGMPガイドラインが採用されており、実際に製造所のGMP査察を実施するのは各連邦州の行政職員である査察官であり、GMPガイドラインを査察時に適用しているとのことである。従って、この場合は、実質的に法的拘束力に近いものを持っていることになる。EU加盟国に製造所をもつ製薬企業と関係する欧州のコンサルタントは今回のドラフトに関して自分たちのこととして切実に受け止めているように筆者には感じられる。
<米国の場合>
EU加盟国ではなく、FDAがPIC/Sに加盟しているため、採用の対象となるのはPIC/SとしてのGMPガイドラインである。その適用に際しての重要度としては、自国のcGMPとそれに基づくオリジナルのガイダンス類、査察マニュアルの内容が優先するであろう。筆者はFDAの警告書の中で「貴社が対応を要する○○の欠陥に関しては、ICH △△の□□ガイダンスを参照せよ」という記載は頻繁に目にしているが「PIC/Sのガイドラインを参照せよ」という記載を目にした記憶がない。
<わが国の場合>
EU加盟国ではなく、厚生労働省(都道府県をも代表している)とPMDAがPIC/Sに加盟しているため、米国の場合と同様に採用の対象となるのはPIC/SとしてのGMPガイドラインである。その適用に関しては、平成24年2月1日付で発出された監視指導・麻薬対策課からの事務連絡『「PIC/SのGMPガイドラインを活用する際の考え方について」の質疑応答集(Q&A)について』の別添の質疑応答集(Q&A)の「Q2 PIC/SのGMPガイドラインは、日本の法規制の枠組みの上でどのように位置づけられるのか。」への回答「A2 日本においては、平成16年厚生労働省令第179号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(以下「GMP 省令」という。)が、法律に定めるGMPの基準である。PIC/SのGMPガイドラインは、これまでに品質保証の指針を示した通知、事務連絡等と同様、GMP 省令を踏まえた上で参考となる品質保証の手法を示したものと位置づけられる。」と明記されているように、従来からの通知、事務連絡と同様の扱いであり、いわゆる法的拘束力を持たない。
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