業界雑感 2018年5月

2018/06/01 その他

 自分の勝手な思い込みかもしれないが、今年2018年は日本の製薬業界にとっての「バリデーション40周年」に当たるとしている。今から40年前の1978年藤沢薬品工業に入社し、本社での導入研修後5月に当時の富士工場(現在の日医工静岡工場)に配属された時、同年の1月に受けたセファメジン製剤工程のFDAインスペクションで、バリデーションという言葉がFDAの査察官から発せられたのだと聞かされた。医薬品製造の基本となっているGMPについて1974年にGMP通知として出され、1980年GMP省令として施行されるといった環境の中、医薬品工場では盛んにGMP教育がなされ始めたばかりの頃である。

 「高圧蒸気滅菌機(オートクレーブ)のコールドスポットが特定されていない」「無菌室空調のHEPAフィルターの完全性試験が実施されていない」「培地充填テストがされていない」、今ではどの医薬品工場でも当たり前となっている無菌バリデーションなのだが、当時はいざやろうとするといろいろな壁が立ちはだかる。例えば、オートクレーブのコールドスポットを特定するには、温度が最も低いと思われる何か所かのポイントの温度を同時に測定する必要がある。熱電対を使えば測定できるけど、どうやってオートクレーブに入れる? とりあえず熱電対を20本くらい束ねてサニタリーのヘルールに通し、接着剤で固めてみるか? その前に、作った熱電対の校正をしなきゃなんないのでは? 恒温槽で校正することになるけど、121℃前後を図りたいので油浴じゃなきゃだめ? 校正するための基準温度計はどうする? ヘルール突っ込んでオートクレーブ運転してみたけど、熱電対の被覆の内側から蒸気が漏れてくるのはどう対処する?  そもそもそんなもの第一種圧力容器のオートクレーブに使っていいの?(ほかに方法がないからしょうがないよ。。) とりあえずヘルール部分だけ被覆のビニールを剥がして接着剤で固めなおして漏れを止めよう。被滅菌物の種類や量はゴム栓、充填器具、ろ過機などなどいろいろあるけど、これもとりあえずいろいろやってみるしかないよね。バイオロジカルインジケーター(BI)というものがあるけど、何を選んだらいいの? BI入れてテストした被滅菌物は生産に使えるの?  といった具合ですべてが手探り、現在のようなバリデーション用の機器や試薬がそろっているわけでもなく、世の中にあるものを工夫しながら使っていくしかない。F₀値とかバイオバーデンとかいったことも走りながら勉強し、議論しながらであった。

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執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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