最新コスメ科学 解体新書【第17回】

細菌とコスメ③ ほんとに効くの? 抗菌剤

 菌の研究を始めて数年がたち、マカデミアナッツやヒトの皮脂に含まれているパルミトレイン酸とそのカルシウム塩、保湿剤として配合されるアルカンジオール、一般には毒性が低く抗菌性は低いものと思われていたノニオン界面活性剤が肌荒れの原因になる黄色ブドウ球菌の増殖を抑制することが分かってきました。特に、幾つかの界面活性剤は肌荒れのもとになるといわれる黄色ブドウ球菌を選択的に抗菌したことから、魅力的な商品コンセプトだけでなく、学術的にも価値のある発見につながりそうな予感がして、一同、わくわくしていたのでした。

 そんな盛り上がりの中、わたしにはちょっとひっかかることがありました。
 「こいつら、商品に入れた時も効くのかな?」

 実は、原料単品ではすごい能力を発揮していたのに、商品に配合した瞬間に、どうということのない効果しか得られない平凡な素材となってしまう、ということは、商品開発の現場でしばしばみられる、いわば「あるあるネタ」なのでした。例えば、防腐剤をクリームや化粧水に配合すると、パワーが落ちてしまって、大量に配合しなければならなくなった、なんていうことがよくあって、それはミセルと呼ばれる界面活性剤が集合してできたカプセルの中に疎水的な官能基を含んでいる防腐剤が閉じ込められてしまうため、と言われていました。

 そこで実験です。界面化学が大好きなW君に、抗菌活性のない界面活性剤と油剤を含んだエマルションに、一番強力な選択抗菌性を示すパルミトレイン酸を配合してもらったところ、「お見事!」なんて言いたくなるほどに完璧に抗菌力が弱まってしまったのです・・・ [1]。そしてその効果は界面活性剤や油剤の配合量の増加とともに顕著になったことから、やはりパルミトレイン酸もミセルやエマルションの中にトラップされ、菌にアタックすることができなくなったためであることが明らかになりました。

 

 

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