WFI製造プロせすへの思い【第22回】

WFI製造施設へは、FDA・PMDA・都道府県薬務課・取引先・内部監査が、それぞれ独自の査察目的を持って来訪します。
受ける側としては、目的に合わせた準備が必要と考えがちでしょう。確かに外国からの査察では、言葉も異なり相応の準備が必要でしょう。
ところが、ことWFIに関しては、来訪者ごとに異なった対応をする必要性は少ないと思います。要は、誰がいつ来訪しようとも「WFIの安全性」を納得してもらえば良いのです。
ただ近年、査察時に提出した文書に対して、意図的に改ざんした事例が公表され、「WFIの安全性」を示す文書に対しても、その信憑性を「うんぬん」しなければならない状況に至りました。
日常の製造現場での「WFIの安全性」に対して、疑いを持って来訪する査察官を納得させること、この視点からの考察を進めます。
1. これまでの取り組みと査察視点の変遷
薬局方各条欄には、WFI水質に関する限度値が定められており、定期的な検査実施によって、「WFI水質限度値をクリアすれば良い」と査察を受ける側では従来考えておりました。
ところが、WFI製造プロセスや製造後の貯槽や送水配管の材質・形状について迄も、査察の際に指摘されるようになりました。
次の段階では、検査方法の信頼性・データを保存する手段・データの信憑性までが言及されるようになったのです。
国内の製造現場で品質を確保する活動を振り返りますと、第一段階として、プロセスバリデーションが導入され、第二段階では、製造装置運転制御・データ処理・データ蓄積をするコンピュータに対して、その信頼性が:CSV(コンピュータ化システムバリデーション)という手法で問われることになり、第三段階では、データの記入ミス・データの隠ぺい・改ざんが言及され、記録文書の信憑性が問われるようになりました。
それまで、国内では顕著でなかった改ざん報告が、他業種でも公表されると行政当局としては、これまでの「信頼性のある品質が確保されているはず」という性善説から「ミスしているのでは?隠ぺいしているのでは?」という性悪説に基づく、疑いを持った査察へシフトせざるを得ない、まことにゆゆしい状況に至りました。
2. 見方を変えてみよう
従来からQC活動によって製造工程の改善、人的な操作ミスの低減活動に取り組み、ましてや、改ざんされた、隠ぺいされた報告例が、発生した事例もない製造現場では、なんで今更、このような製造に直接かかわらない作業や文書手続きに時間を取られなければならいのか、と感じるのがもっともです。さらに、筆者世代からすれば「私達を信頼できないのですか?」と喉まで反論が出かかります。
一方で、安全なWFIを製造しているのであれば、それを判りやすく、納得されるまで説明することは、患者さんの立場に立てばもっともです。WFIの製造現場とて世の中の流れに逆らうことはできません。
無実の罪を着せられた人が、法廷で罪を犯してないことを示すことに比べたら、まだまだこの事態はた易いと考え、おおげさに言えば、冤罪を立証するつもりで考えてみましょう。
3. 疑いを晴らすには
疑いを持って来訪する査察官に対して、疑いを晴らすには、それなりの準備が必要です。都合の悪いデータを隠しているのではないか、書き直しているのではないか、と提出した文書データに対して、疑いを持って来訪する査察官に対して、データの信憑性を納得してもらうことになります。
これにはデータが生まれた過程に沿って、1工程ごとに信頼性を説明する必要があります。「我々を信じてください」が通らないのですから、めんどうな作業であり、疑いを持った人を納得させるには煩雑な作業を伴います。
弁護士は人を納得させる職業ですが、普通の人は、家族内など日常的にあまり経験が少ない作業です。なぜなら、日常生活で仕事を依頼した人を、いちいち疑っていては、仕事はスムースに進みません。
現場でモノを製造している人からみれば、これは製造現場の仕事ではないと考えてしまうのも止むを得ないと思います。品質を管理する他部門の人に任せたいところですが、現場が関与なしにデータの信憑性を判ってもらうことはできません。
安全性に対して、自ら適格と納得した方法で製造管理した結果であるWFI最終検査のデータに対して、「正しく記録されているか」、裏返せば、「データ改ざんを行っていないか」という疑いを持って来訪する人をいかに納得させるということ、これは、やっかいな作業の連続ですが、とりあえず、筆者が考えつく対応方法を整理してみようと思います。
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