医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第50回】

 

生分解性

 

 いよいよ基本的考え方の「考慮すべき評価項目」の最後の項である「生分解性」に関するお話です。

 基本的考え方の表1の脚注には、「構成部材や構成材料が患者の体内に残留し、生体内で分解する可能性がある医療機器については、生体内分解に関する情報を示すことが望ましい。」と記されています。

 この文章が示すとおり、
 ① 体内に残留すること
 ② 生体内で分解する可能性があること
が、生分解性に関する情報を集めて評価することが必要な医療機器に該当します。
 上記の①及び②をいずれも満たす医療機器となると、組織や血管内に用いられるインプラントで、生体内で分解することを期待して開発されたものが対象となるということかと思います。
医療機器の構成部材として使用されている潤滑ゼリーは水溶性ゲルで、体内で溶けるものが多いかと思います。ただ、これは①には該当しませんので、ふつう、生分解を考慮する対象にはならないでしょう。
 また、創傷部位を覆う被覆材にはコラーゲンやキチンなどの天然の高分子を用いたものがありますが、これらは➁の可能性はありますが、一定期間後に除去する医療機器がほとんどかと思いますので、除去するまでの期間は分解しないのであれば、生分解性の評価対象とする必要性は低いと考えられます。ただし、除去する際には多少は体内に残留するとか、適用した直後から分解や溶解し始める等の性質があれば、残留量や分解量を見積り、分解機序、分解産物やその代謝、排泄様式を調査した上で、生物学的安全性に及ぼす影響を評価することが必要かもしれません。

 生体吸収分解性材料には、有機高分子材料、無機材料があり、加えて、天然、人工の区別ができると思います。

 

種別 特徴
有機高分子
材料
天然 動物やヒト由来で、生体への親和性は高いが、抗原性を有している可能性や、製造時に微生物のコンタミネーションの可能性がある。 コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、キチン/キトサン、フィブリン、セルロース
人工 医療機器への適用例が最も多い材料であるが、分解生成物が体内でどのように代謝されて分布し、排泄されるのか不明なものが多い。 ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、乳酸-カプロラクトン共重合体
無機材料 天然 - -
人工 無機物を加工したり、合成したりして製造され、骨内や血管内インプラントとして利用される。製造工程中で有機物が用いられることがある。 β-TCP、炭酸アパタイト、マグネシウム、マグネシウム合金

 

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