再生医療等製品の品質保証についての雑感【第54回】

2023/10/13 再生医療

水谷 学

製造コストの低減活動について、どのように考えておくべきかを、バリデーション設計実施の観点より述べる。

第54回:バリデーション設計の考え方 (10) ~ バリデーション設計と製造コストの削減

はじめに
 引き続き、バリデーション設計についてのお話しをさせていただきますが、そろそろ内容が込み合ってきましたので、今回で一旦区切りとしたいと思います。本稿では、製造コストの低減活動について、どのように考えておくべきかを、バリデーション設計実施の観点より述べさせていただきます。当然、異論は多くあると存じますが、提案の1つとして、笑って読んでいただければ何よりです。(注:本稿は、細胞加工製品が治験前(製品開発時)にバリデーション設計を考慮することを前提としたお話しとなっております。)


● そもそもバリデーション設計では...
 バリデーション設計の目的は、製品の品質を一貫して再現良く実現するための活動です。そこで要求される作業群は、予め手順構築(SOP化)されたものでなければならず、容器数等についても、予め決定された条件以外では実施できません。ここでは、例えば、炭酸ガスインキュベータに入れる培養容器の数や、容器を置く棚の位置についても、原則として、決定された手順・条件以外は許容されません。また、これらの縛りは、当然ですが、複数の作業(工程)の順序や条件(運用)についても同じです。
 細胞加工製品の生産活動における複数工程の運用は、以前(第17回、第32回)にもお話ししたように、培地交換や継代等の作業工程がバッチ単位の全体工程に厳密に紐づけられるので、柔軟性に乏しく、長期間にわたり条件が制限される可能性が生じます。すなわち、生産活動において、複数のバッチを並行して運用して実施しようと考えた場合、相互による製品品質への影響評価はより煩雑となると想定します。例えば、製造数の増大に伴い、構造設備のレイアウトや、物品の導入経路や手順、順番など、要求仕様に関わる変更が必要となる可能性があり、変更(再バリデーション設計)が困難となる場合も生じると考えます。

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

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