新・医薬品品質保証こぼれ話【第28話】

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

教育訓練の実効性確保の考え方


教育訓練の“実効性の確保”は医薬品の品質を安定的に確保する上で大変重要な課題であり、2021年8月施行の改正GMP省令においても、第19条(教育訓練)第4号にこれに関連する以下の条文が新設されました。「教育訓練の実効性を定期的に評価し、必要に応じて改善を図るとともに、その記録を作成し、これを保管すること」。教育訓練の“実効性の評価”については以前よりその重要性が指摘されていましたが、上記の改正により、正式にGMP省令の要件として規定された形です。

GMPの領域において“教育訓練の実効性を評価する”とは、実施した教育訓練(以下、「教育」)が、製造業務や試験業務など、職員それぞれが“担当する業務をミスなく的確に遂行する”ことに有効であったかどうかを測ることを意味し、知識教育のあとの筆記試験の合否で判断できるような簡単な問題ではありません。したがって、この課題に的確に対応するのは大変難しく、このことは関係者であれば誰もが経験し、認識しているものと思われます。

GMP教育における“実効性”に関して大切なのは実効性を“確保”することであり、GMP省令の要件たる“実効性の評価”それ自体は、実効性の確保を検証する手段にほかなりません。従って、先ずは実効性の確保の方法、つまり、“実施する教育が実務の遂行に対し有効なものである”とするためにはどうすればよいかを考える必要があります。年間の教育の進め方やプログラムを作成する際には、特にこの観点が求められます。

教育を実効性あるものにするための基本は、その教育の重要性を理解することにあります。そのためには、全体の業務フローの中で自分が担当する業務がどういう位置にあり、最終製品の品質確保にどのように関わっているかといったことを学ぶことが大切です。例えば、調製工程全体のフローの中で自分が担当する工程が前後の工程とどのように関わり、また、業務上注意を要する点は何かといったことを知っておくことは、ミスのない業務遂行と品質確保に不可欠であり、こういったことから教育の重要性が理解できます。

試験業務の場合も製造業務の場合と同じような考え方により、先ず、教育の重要性を理解することが大切です。加えて、試験業務は専門性が高い業務が多いことから、安定した試験精度を確保するためには資格認定システムにより職員の試験スキルを保証することが望まれます。資格認定は教育の実効性確保の根拠の一つとすることも可能です。しかし、そのためには、資格認定システムそのものの厳格性が要件となるのは当然です。各企業の実情に合わせてシステムを構築し、説得力のある精度の高いシステムとすることが重要です。

試験業務は医薬品品質の信頼性に直結する業務であり、分析機器の校正や標準品の管理など、品質管理の基本となる事項に関する教育も重要です。また、記録の信頼性を確保するためのData Integrityに関する教育も大切となります。特に、対応を誤ると違法性に発展する OOS(規格外試験結果)への対応手順は、関係者でしっかり共有しておく必要があります。
 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます