【第4回】CSVからCSAへ データインテグリティも踏まえたFDAの新ガイダンス動向

FDA CDRHが新ドラフトガイダンスを2022年9月13日付で公開
FDAのCenter for Devices and Radiological Health(以下、「CDRH」と略記。)とCenter for Biologics Evaluation and Research(以下、「CBER」と略記。)は連名で、ドラフトガイダンス” Computer Software Assurance for Production and Quality System Software”( 生産及び品質システムソフトウェアのためのコンピューター・ソフトウェア・アシュアランス:以下、「本ドラフトガイダンス」または「CSAドラフトガイダンス」と略記。)を2019年9月13日付でそのガイダンスウェブページ(https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/computer-software-assurance-production-and-quality-system-software)にて公開した。一昨年10月に本連載を開始した時点では、その後すぐに公開されるであろうと予測されていたものが、2年の歳月を経てやっと日の目をみたという状況である。
本連載では、本ドラフトガイダンスの内容が最終化に達した暁にはどのような新しい効果が期待できるのかあるいはできないのかにフォーカスしながら、第3回に引き続く形で今後、複数回の解説を展開する。また、本ドラフトガイダンスに対し、2022年11月14日までコメントが募集されており、様々な企業、団体および個人から投稿されたコメントがリアルタイムで米連邦政府のドケット・ウェブページ(https://www.regulations.gov/docket/FDA-2022-D-0795/comments)で一般公開されている。それらの中の主なものについても追って言及する予定である。以下、本ドラフトガイダンスの概要を、各種事前情報等との対比を交えながら示す。なお、本ドラフトガイダンスの対訳は既にこのGMP Platformの資料ページで公開されている。

ガイダンスのタイトルと適用範囲
本連載の第1回に記したように2019年10月11日付米国連邦政府2022会計年度発出予定ガイダンスリストでは、”Computer Software Assurance for Manufacturing, Operations, and Quality System Software”というタイトルであった。しかし、今回公開されたものでは” Computer Software Assurance for Production and Quality System Software”となり”Operations”が削られていた。また、通常のガイダンス文書はタイトルに続いて、”Guidance for Industry”(業界向け)となっていることが多いが、今回は”Draft Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff”(業界及び食品医薬品局担当者向けドラフトガイダンス)となっている。タイトル中の“for Production and Quality System Software”という範囲を示す部分は、本ドラフトガイダンスの”II. Background” (「第Ⅱ章 背景」)の52行目からのパラグラフにあるように、医療機器の品質システムについての連邦規則 “21 CFR 820 Quality System Regulation”の「セクション820. 70 生産とプロセスの管理」-「(i) 自動化プロセス」項の”When computers or automated data processing systems are used as part of production or the quality system, the manufacturer shall validate computer software for its intended use according to an established protocol. All software changes shall be validated before approval and issuance. These validation activities and results shall be documented.”(「コンピュータまたは自動化データ処理システムが生産または品質システムの一部として使用される場合には、製造業者は確立されたプロトコールに従ってその使用目的に対してコンピュータソフトウェアをバリデートしなければならない。すべてのソフトウェア変更は承認と発行の前にバリデートされなければならない。それらのバリデーション活動と結果は文書化されなければならい。」)の太字下線部(筆者による。)に一致する。すなわちこれは、CDRHの従来からの” General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff”(ソフトウェアバリデーションの一般原則;業界及びFDA担当者向け最終ガイダンス:以下、「SVガイダンス」と略記。)が、”software in a medical device (SiMD) “(「医療機器に含まれるソフトウェア」)あるいは” software as a medical device (SaMD)” (「医療機器としてのソフトウェア」)をまず主対象にしていたのに対し、本ドラフトガイダンスは医療機器そのものを構成するこれらのソフトウェアは対象とせず、医療機器の生産と品質システムに使用されるソフトウェアだけを対象としていることを意味し、その説明が本ドラフトガイダンスの”III. Scope”(第Ⅲ章 適用範囲)の99行目からのパラグラフでなされている。
また、本ドラフトガイダンスの発行部署はSVガイダンスと同様のCDRHとCBERであり、”I. Introduction”(第Ⅰ章 はじめに)の脚注1に”in consultation with the Center for Drug Evaluation and Research (CDER)”(「医薬品評価研究センターと協議の上」)と書かれていることから、CDERも本ドラフトガイダンスの策定に関与して内容を是認しいることがわかる。このため筆者は、本ドラフトガイダンスが最終化されたならば、医薬品GMP分野の「生産及び品質システム」にもCDERによって適用が認められると予測する。この解釈は必ずしも本ドラフトガイダンス中に明確に記載されているわけではないが、筆者が米国と英国の業界関係者2名に個人的に尋ねたところ、両者から異論がない旨の返事を得た。ただし、今後CDERから明示的なアナウンスがなされるかどうかは予断を許すものではない。筆者は、医薬品の製造と品質システムに使用されるコンピュータ化システム、具体的には、製造実行システム(MES)、ラボラトリー情報管理システム(LIMS)、クロマトグラフィーデータ管理システム(CDS)、文書管理システム(DMS)、品質マネジメントシステム(QMS)、システム監視プロセス制御システム(SCADA)、企業資源計画(ERP)の一部のモジュール等については全て、本ドラフトガイダンスが最終化された時点からCDERはこのガイダンスに示された考え方に沿って実施されたCSVを認めることになると考え、その内容について強い興味を持ってこの解説を執筆している。
 

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