医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」【第5回】

2021/08/27 施設・設備・エンジニアリング

星野 隆

今回は基本計画ステージについて記載していく。

今回は、FSステージに続く、基本計画ステージについて記載していく。

参考 以前に記載した記事の目次
1.    はじめに
2.    プロジェクトステージの概要
3.  何をマネジメントするか
4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
6.  プロジェクトマネジャーの資質
7.  プロジェクトで使用することば
8.  外部への依頼範囲
9. コントラクターとの契約、および訴訟を意識したマネジメント
10. FS(Feasibility Study)ステージ

 

11. 基本計画(概念設計)ステージ
 第1回の表2.1に記載したが、基本計画(または概念設計)とは、FSにて決定したケースについて、基本設計(基本計画に続くステージ)を実施するための条件設定を行うステージである。また、FSステージを経過しないプロジェクトでは、この基本計画からプロジェクトを開始する場合もある。つまり、基本設計を開始する前に、設計およびプロジェクト遂行上の目的、予条件、前提条件を明確にしてまとめ、コンセプトの検討、設備概要の検討を行うステージである。さらにこの基本計画の成果(予算、スケジュール、設備概要等)の承認を得て、次ステージへの移行のGo/No Goの第二次評価を行うステージと考えられる。新製品の場合は、当該プロジェクトでの設計および仕様決定上の基本とする開発データ・一般データなどをまとめる(工業化研究成果のパッケージ化)ことが、同時並行で行われているステージでもある。このステージにおける検討は、主として製薬会社にて実施する場合もあれば、アライアンス契約等により外部との協働にて実施する場合もある。いずれの方法を採るかは製薬会社のリソース等の事情によると考えられる。

 主な検討項目は(以下の項目は順不同であるが)、

  • FSの成果物の精度アップ
    • FSで決定した生産場所について各種調査検討
    • 生産規模の精度アップ、将来の生産予想等の精度アップ
    • インフラ、および試運転時や生産時の要員の検討
       
  • FSステージで作成したプラント基本構想をベースに、基本計画仕様などのプラントの具体化検討
    • プラント方式の決定(生産方式、専用設備/マルチ設備等)
    • 上記の生産規模に従い、本プラントサイズの決定
       
  • 基本計画仕様
    • プロセス設計
    • プロセスフロー
    • Preliminary P&ID
    • 物質収支(製造法とタイムシート)
    • 機器基本仕様
    • 主要機器リスト
    • ユーティリティ構想
    • ユーティリティ消費量概要
    • 配置基本計画
    •  材質選定基準
    • 運転方案(製造法とタイムシート)
    • インフラ計画 等
       
  • 予算算出と基本スケジュール(FSステージの予算や工期の精度アップ)
  • GMP Statementの作成(バリデーション、クオリフィケーションの方針) 
  • プロジェクト構想 
    プロジェクトの構想確定、外部依頼先への契約方式範囲の検討
  • 上記を基に事業化の第二次評価を行い、次のステージのGo/No Goを決定

(1) プロセス検討
 医薬品設備のプロジェクトの場合、基本計画ステージにおいてもプロセスが未完成なことが多い。特に新製品の場合は、当該プロジェクトでの設計および仕様決定上の基本とする開発データ・一般データなどをまとめる(工業化研究成果のパッケージ化)ことが、同時に行われており、複数のプロセス案が存在することもある。
 基本計画ステージでのプロセス設計は、FSステージの精度アップであるが

  • 配置構想
  • プロセス概要書
  • プロセスブロックフロー
  • 基本プロセスフロー
  • 物性データ
  • 物質収支
  • 主要機器基本仕様
  • 基本操作条件 
  • 材質選定基準
  • 汚染物質データ
  • 廃棄物リスト
  • 用役消費量概算書

といった成果物を作成することになる。
 

2ページ中 1ページ目

執筆者について

星野 隆

経歴 1971年3月大阪大学工学部機械学科卒業後、同年4月武田薬品工業(株)に入社。2014年3月の同社退社までの間、同社および同社の関連会社における建設工事において、プロジェクト業務に携わった。プロジェクトの種類としては、医薬品、ビタミンバルク、調味料バルク、化学品、農薬等の生産施設をはじめ、研究所の建設にも携わった。また、国内外のプロジェクトや、他社との共同プロジェクトにも参画した。また、メンテナンスやユーティリティ部門のマネジャーの経験もあり、総合的なエンジニアである。
社外の活動としては、ISPE(国際製薬技術協会 : International Society for Pharmaceutical Engineering)の日本本部理事、常任理事を歴任。日本プロジェクトマネジメント協会理事。
現在は、個人コンサルタントStar Enterprise(プロジェクトマネジメント、エンジニアリング、イベント企画)。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

20件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

2025年8月21日(木)10:30-16:30

GMP教育訓練担当者(トレーナー)の育成

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます