医薬品GLP基礎知識のよもやま話【第1回】

GLP(good Laboratory Practice)とは
ヒトの安全性に係わる非臨床(毒性)試験の信頼性確保の為に試験の実施基準として設けられた。その発端は、米国FDA(Food and Drug Administration)に提出されたがん原性試験報告書の腫瘍発生頻度に恣意的な選択がみられたことに始まる。その後、新薬承認申請書並びに試験施設を調査したところ、①生データの紛失、②データの転記ミス・恣意的選択、③試験従事者のスキル不足、④不適切な動物飼育管理等が認められた。このことは、報告書と元データとの整合性検証(QC: Quality check)だけで解決するものではなく、試験計画や試験機器・検査従事者のスキル等のソフト的な管理並びに動物施設や分析機器等のハード的なメインテナンスに加えて被験物質の純度と安定性を含めた全般的な試験の管理基準が信頼性の確保に必要となった。

毒性試験では、適切な純度や安定性のある被験物質を専門的性の高い従事者により試験計画並びに標準操作法(SOP)に従い試験系に処置を行い、検査いたしますが、検査室や機器のコンタミを防ぐためのスケジュール調整等のマネージメント、想定外の事象への対応への連絡・責任体制等々と積極的な試験従事者間のコミュニケーションも信頼性に寄与します。
たとえば、反復投与毒性試験の専門的業務を次に示す。
 
自動測定機器とコンピュータ化により各種検査は適切な試料が提供されれば、結果は帳票までデータ処理の自動化が進み単純なミスは減少するが、被験物質の投与、検査試料の採取や病理組織学的診断等では従事者のスキルに委ねられている。
その他、生殖発生毒性試験では、胎児の奇形を調べるため外観、内臓、骨格等の専門的検査、遺伝毒性試験では、細菌や哺乳類の培養細胞を用いた専門的な検査等、それぞれの毒性試験で特異的な機器・スキルが求められる。また、全般的には空調機器を含めた施設・機器の管理も、成績への影響が見逃せない。

適切な試験成績、報告書の作成にむけて、試験従事者はスキルと経験を向上させ、施設環境の改善と試験計画の正確で完全な遂行を行うが、各当事者による試験毎の努力に依存し、偏りも否定できない。操作法の標準化とスキルアップ教育が望まれる。施設内の各種試験に影響を及ぼす施設使用計画や操作手順、施設内の被験物質・試験間のコンタミや取り違いの管理、試験成績と報告書との整合性のチェック等の信頼性保証(QA: Quality Assurance)の業務も欠かせない。

試験の実施におけるコンピュータの導入がすすみ、正確で、恣意のない完全に網羅した資料も、修正権限外の方のアクセスによる改ざん、データ破棄へのセキュリティ確保もしなければならない。また、祝休日等では、都合により補助業務の方によるなれない作業の遅れ、突発的な事故や試験計画・標準操作からの逸脱のリスクへの連絡、指示への対応手順も見逃せない。

信頼性に影響を及ぼす課題をGLP制度に至る経緯から種々示してきたが、試験実施の基準の規制情報から信頼性のある試験の実施、報告書の作成に向けて、適合方法を探る。

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