【医薬品工場建設のノウハウ 番外編】原薬製造設備の基本計画(概念設計)のポイント
原薬とは何か。
医薬品規制調和国際会議ICH-Q7A及び厚生労働省「原薬GMPのガイドライン」では、原薬(医薬品有効成分)(API)は、医薬品の生産に使用することを目的とする物質又は物質の混合物で、医薬品の製造に使用された時に医薬品の有効成分となるものと定義されている。そして、このガイドラインでは、原薬は化学的合成、抽出(植物から抽出、生薬抽出物)、細胞培養・発酵、天然資源からの回収又はこれらの組み合わせにより製造されるとしている。
またワクチン、全細胞、全血及び血漿、血液及び血漿から誘導される原薬(血漿分画物)並びに遺伝子治療用原薬、血液及び血漿を原料として製造される原薬もあるとしている。このように、原薬は多種多様な方法で製造されている。そして、製造された原薬は、その形態から低分子、中分子、高分子原薬に分類されている。
概ね、化学合成では低分子原薬及び近年注目されているペプチド合成、核酸合成による中分子原薬が、植物からの抽出では低分子原薬と高分子原薬の単品又は混合、細胞培養・発酵では高分子原薬が製造されている。
原薬の製造設備へのGMP上の要求事項に関しては、上記「原薬GMPガイドライン」やISPEベースラインガイド Vol.1、Vol.6等に多く報告されている。
本稿では、この原薬の製造設備に関し、多種多様な製造方法の共通事項にフォーカスして、プロセスエンジニアリングの視点から提言する。
尚、近年、中分子原薬と同様、医薬品業界で注目されているのが連続生産であるが、その汎用化への道のりは厳しく、まだ米国で5品目、国内で2品目において、製剤工程に用いた製品が承認されている程度である。
従って、本稿では、殆ど全ての原薬製造に採用されているバッチ生産に対するプロセスエンジニアリングの視点から提言する。
因みに、医薬品製造においては、その製品品質の確保の観点から歴史的にバッチ生産が採用されている。これは、バッチ単位で製品品質を確認し、OOSのものはバッチ単位で処理、処分できるようにするためである。
またプラント規模(多品種少量)の観点からも連続生産するためには小型で特殊な装置が必要であり現実的ではなかったと認識している。
尚、バッチとロットの定義について色々な意見があるが、上記厚生労働省「原薬GMPガイドライン」中の以下のロットの定義に従い、同義と考える。
ロット
規定された限度内で均質と予測できる、一つの工程又は一連の工程で製造された原材料等の特定の量。ロットサイズは、特定の量又は特定の時間内に製造された量と定義される。バッチともいう。
バッチ生産と連続生産の最も大きな違いは時刻(時間)に対するアプローチである。そして、そこには副題に挙げた「時は金なり」の要素が多数存在している。
エネルギープラント、ケミカルプラントのような大型設備に一般的に適用される連続生産では、設備のスタートアップ、シャットダウンを除き、設備はいつでも同じ状況を維持している。言い換えれば、スタートアップ以降、シャットダウンするまでは24時間365日毎日生産し続けている。このため、時刻に関するアプローチは基本的に必要ない。スタートアップ、シャットダウンには若干の考慮が必要だが、数日掛かっても問題ないことが多いのであまり気にされない。
連続生産では、ある機器の温度、圧力、液位等の制御パラメータは常に一定である(定常状態になるように制御されている)。また移送機器による流量も一定である。
一方、医薬プラントに一般的に適用されるバッチ運転では、設備の状態は時刻と共に刻々と変化する。言い換えれば、全ての設備が常に非定常状態にある。尚、数時間維持するというように変化がないと思われる時刻もあるが、厳密にはその間でもプロセスは微妙に変化している。例えば、晶析におけるエージングは設備の状態は維持されているが、結晶そのものは変化している。
この時刻と共に変化することに着目することにより、設備、施設だけではなく人件費も合理的なものとすることができることを提言する。
幾つか例を挙げる。
同時刻に行うこととなっていた反応工程の開始時刻をずらすことにより、反応工程に必要な電気、スチーム、冷却水、圧縮空気等のユーティリティ使用量を削減することができ、結果、ユーティリティ設備の容量削減によりCAPEX(Capital Expenditure資本的支出)もOPEX(Operating Expenditure運用費(修繕費)も削減できる。
また、加熱、冷却、移送所要時間を時刻管理上可能な最長にすることにより、加熱、冷却、移送システムの最小化を図ることができる。大雑把には、加熱、冷却時間を2倍にすると加熱冷却システムの能力は半分で済むし、移送時間を2倍にすると流量が半分になり配管口径はひとサイズ小さくすることができる。
一連の製造運転中の各生産機器の稼働率を確認し、稼働率の低い機器は兼用とすることによりCAPEXを削減できる。日勤以外の時刻に行うこととなっていた手動操作の時刻を調整することにより、日勤のみで製造することができればシフトを組む必要がなくなりオペレータの人件費が削減できる。
パイロットスケールからコマーシャルスケールにスケールアップする場合、例えば反応釜の容量を10倍にしてもジャケット伝熱面積はその2/3乗の約5倍にしかならないため同じ所要時間で加熱、冷却を行おうとすると熱冷媒との温度差を大きくするか外部熱交換器を設けなければならなくなりCAPEXが増加する。このような時の総合的な検討に際しても時刻の検討が不可欠である。
これらは、ネットワーク手法によるプラント建設管理にて行う山積み、山崩しと類似している。そのプラント建設管理のためのシミュレータとしては、PrimaveraやMicrosoft Projectが汎用である。
これらのシミュレータを原薬のバッチ生産の計画・管理にも活用したいところであるが、原薬製造で多用される「追っ掛けバッチ(最初のバッチが最終製品として産出される前に初期工程機器が次のバッチの製造を開始すること)」に対応することが難しいためうまくいかないようである。
このため、各社各様のやり方で、バッチ生産の工程をモデル化し、シミュレーションすることにより最適化しているのが実情である。
以上を踏まえたバッチ生産設備の基本計画(概念設計)段階のプロセスエンジニアリングとして、その初期に以下の設計図書を作成、検討することを推奨する。
(1) Operational Block Flow(OBF)
全てのプロセスエンジニアリングのベースとなる図書である。シーケンシャルな運転、操作手順をまとめたものであり、ユーザーからの情報を元にコントラクタが作成することが望ましい。尚、このOBFには反応、抽出、晶析等の製造工程に主眼を置いたもの(Process Base)と反応槽、抽出槽、晶析槽等の設備に主眼を置いたもの(Equipment Base)がある。
そして、Process Baseはユーザーとのコミュニケーション用に、Equipment Baseはコントラクタの以降の設計用に使用される。
(2) Process Flow Diagram(PFD)
連続生産設備でも作成される主要な生産機器を線図で示したものである。化学工学的な知識のない人にも視覚的に理解できるものであり、配置、配管計画のベースとなる図書である。
(3) Material Balance / Heat Balance(MB/HB)
連続生産設備でも作成される各工程又は機器での物質収支、熱収支をまとめた図書である。加熱、冷却、乾燥、移送等の単位操作機器の設計のベースとなる図書である。
連続生産設備にはない各単位操作の「所要時間」の設定が不可欠である。そして、この所要時間は後述するOTSとセットでシミュレーション対象となる。
尚、MB/HBをPFDやOBFの中に組み込んでしまうこともある。
(4) Operational Time Schedule(OTS)
前述したバッチ生産の工程表であり、連続生産設備には適用されないものである。この図書を基本に、バッチ生産運転の最適化を行うことになる。
「時は金なり」のキーとなる図書であることより、以下に簡単な検討手順を示す。
① 縦のカラムにプロセス機器を記載し、横のカラムに時刻(24時間で数週間)を
設定する。
② プロセス機器毎の単位操作(仕込み、撹拌、加熱、濃縮、払出し等)を時刻に
従ってガントチャートとして記載する。
③ あるプロセス機器からの払出しが他の機器の仕込み(受入れ)である場合は、
ネットワーク手法により結合し関係を明確にする。
④ 各単位操作の名称は上述OBFやMB/HBと整合させる。
⑤ 各単位操作の所要時間(何時から何時まで)はMB/HBと整合させる。
⑥ 夜間、休日の扱いを決め反映する(夜間、休日は停止する場合は状態維持を単位
操作とする)。
⑦ 以上により全てのプロセス機器の単位操作を表示した後、全体を俯瞰し、第1次の
総合的なバランス検討を行う。
⑧ 繰り返し操作が定常化するまで追っ掛けバッチを追加する。
⑨ バッチ運転のクリティカルパスとキャンペーン運転のクリティカルパスを明確に
する。クリティカルでない単位操作にはフロートを明記する。
⑩ 各プロセス機器の単位操作ごとに必要なユーティリティ量(瞬時流量及び必要に
応じ積算流量)を追記する。
⑪ 時刻毎の各ユーティリティの使用量を合算(山積み)した後、ピークを探し、
フロートの調整より第1次の平準化(山崩し)を行う。
⑫ 各プロセス機器の稼働率、手動操作の混雑率、プロセスそのものへの影響等を総
合的に評価する。この時②~⑫の手順で複数回のシミュレーションが必要と
なる。
尚、多くの原薬製造に適用されるマルチパーパス設備の場合は、上記図書と併せて、以下の図書も作成することを推奨する。
(5) Cleaning Design Strategy(CDS)
バッチ生産終了後の製造設備の洗浄に関する方針をまとめた図書である。
洗浄対象物、許容残留量、洗浄方法、ワースト個所の特定方法等を明確にする必要がある。
許容残留濃度が厳しい治験原薬製造設備やある種の機器を繰り返し使用して合成を繰り返していく中分子原薬製造設備にはぜひ適用すべきである。
尚、GMP上は再現性の高いCIPが望まれるが、許容残留濃度が厳しい場合や治験原薬設備のように小規模設備の場合はCOPが採用され、上記OTS上のクリティカルな操作となることが多いので注意を要する。
また、細胞培養・発酵、ワクチンや無菌原薬の場合は、更に以下の図書も作成することを推奨する。
(6) Sterilization Design Strategy(SDS)
バッチ生産前の生産設備の滅菌に関する方針をまとめたものである。
一般的にはSIPが採用されるが、コールドスポットが懸念される場合やスチームの圧力に耐えられない場合には分解してオートクレーブを掛けることがあり、上記OTS上のクリティカルな操作となることが多いので注意を要する。
尚、滅菌前の洗浄が必須であることより、上記CDSとセットで適用される。
以上、原薬製造設備の基本計画(概念設計)におけるプロセスエンジニアリングのポイントについて提言した。
原薬製造工場の基本計画にはプロセスエンジニアリング以外にも建築、空調、電気、配管、計装、制御、バリデーション等多くのエンジニアの参画が必要である。
但し、原薬製造工場の基本計画(概念設計)ステージでCAPEXとOPEXへの影響度が最も高いのはプロセスエンジニアリングである。
本稿の内容が原薬製造工場のCAPEXとOPEXの適正化(最小化)に寄与できれば幸いである。
医薬品規制調和国際会議ICH-Q7A及び厚生労働省「原薬GMPのガイドライン」では、原薬(医薬品有効成分)(API)は、医薬品の生産に使用することを目的とする物質又は物質の混合物で、医薬品の製造に使用された時に医薬品の有効成分となるものと定義されている。そして、このガイドラインでは、原薬は化学的合成、抽出(植物から抽出、生薬抽出物)、細胞培養・発酵、天然資源からの回収又はこれらの組み合わせにより製造されるとしている。
またワクチン、全細胞、全血及び血漿、血液及び血漿から誘導される原薬(血漿分画物)並びに遺伝子治療用原薬、血液及び血漿を原料として製造される原薬もあるとしている。このように、原薬は多種多様な方法で製造されている。そして、製造された原薬は、その形態から低分子、中分子、高分子原薬に分類されている。
概ね、化学合成では低分子原薬及び近年注目されているペプチド合成、核酸合成による中分子原薬が、植物からの抽出では低分子原薬と高分子原薬の単品又は混合、細胞培養・発酵では高分子原薬が製造されている。
原薬の製造設備へのGMP上の要求事項に関しては、上記「原薬GMPガイドライン」やISPEベースラインガイド Vol.1、Vol.6等に多く報告されている。
本稿では、この原薬の製造設備に関し、多種多様な製造方法の共通事項にフォーカスして、プロセスエンジニアリングの視点から提言する。
尚、近年、中分子原薬と同様、医薬品業界で注目されているのが連続生産であるが、その汎用化への道のりは厳しく、まだ米国で5品目、国内で2品目において、製剤工程に用いた製品が承認されている程度である。
従って、本稿では、殆ど全ての原薬製造に採用されているバッチ生産に対するプロセスエンジニアリングの視点から提言する。
因みに、医薬品製造においては、その製品品質の確保の観点から歴史的にバッチ生産が採用されている。これは、バッチ単位で製品品質を確認し、OOSのものはバッチ単位で処理、処分できるようにするためである。
またプラント規模(多品種少量)の観点からも連続生産するためには小型で特殊な装置が必要であり現実的ではなかったと認識している。
尚、バッチとロットの定義について色々な意見があるが、上記厚生労働省「原薬GMPガイドライン」中の以下のロットの定義に従い、同義と考える。
ロット
規定された限度内で均質と予測できる、一つの工程又は一連の工程で製造された原材料等の特定の量。ロットサイズは、特定の量又は特定の時間内に製造された量と定義される。バッチともいう。
バッチ生産と連続生産の最も大きな違いは時刻(時間)に対するアプローチである。そして、そこには副題に挙げた「時は金なり」の要素が多数存在している。
エネルギープラント、ケミカルプラントのような大型設備に一般的に適用される連続生産では、設備のスタートアップ、シャットダウンを除き、設備はいつでも同じ状況を維持している。言い換えれば、スタートアップ以降、シャットダウンするまでは24時間365日毎日生産し続けている。このため、時刻に関するアプローチは基本的に必要ない。スタートアップ、シャットダウンには若干の考慮が必要だが、数日掛かっても問題ないことが多いのであまり気にされない。
連続生産では、ある機器の温度、圧力、液位等の制御パラメータは常に一定である(定常状態になるように制御されている)。また移送機器による流量も一定である。
一方、医薬プラントに一般的に適用されるバッチ運転では、設備の状態は時刻と共に刻々と変化する。言い換えれば、全ての設備が常に非定常状態にある。尚、数時間維持するというように変化がないと思われる時刻もあるが、厳密にはその間でもプロセスは微妙に変化している。例えば、晶析におけるエージングは設備の状態は維持されているが、結晶そのものは変化している。
この時刻と共に変化することに着目することにより、設備、施設だけではなく人件費も合理的なものとすることができることを提言する。
幾つか例を挙げる。
同時刻に行うこととなっていた反応工程の開始時刻をずらすことにより、反応工程に必要な電気、スチーム、冷却水、圧縮空気等のユーティリティ使用量を削減することができ、結果、ユーティリティ設備の容量削減によりCAPEX(Capital Expenditure資本的支出)もOPEX(Operating Expenditure運用費(修繕費)も削減できる。
また、加熱、冷却、移送所要時間を時刻管理上可能な最長にすることにより、加熱、冷却、移送システムの最小化を図ることができる。大雑把には、加熱、冷却時間を2倍にすると加熱冷却システムの能力は半分で済むし、移送時間を2倍にすると流量が半分になり配管口径はひとサイズ小さくすることができる。
一連の製造運転中の各生産機器の稼働率を確認し、稼働率の低い機器は兼用とすることによりCAPEXを削減できる。日勤以外の時刻に行うこととなっていた手動操作の時刻を調整することにより、日勤のみで製造することができればシフトを組む必要がなくなりオペレータの人件費が削減できる。
パイロットスケールからコマーシャルスケールにスケールアップする場合、例えば反応釜の容量を10倍にしてもジャケット伝熱面積はその2/3乗の約5倍にしかならないため同じ所要時間で加熱、冷却を行おうとすると熱冷媒との温度差を大きくするか外部熱交換器を設けなければならなくなりCAPEXが増加する。このような時の総合的な検討に際しても時刻の検討が不可欠である。
これらは、ネットワーク手法によるプラント建設管理にて行う山積み、山崩しと類似している。そのプラント建設管理のためのシミュレータとしては、PrimaveraやMicrosoft Projectが汎用である。
これらのシミュレータを原薬のバッチ生産の計画・管理にも活用したいところであるが、原薬製造で多用される「追っ掛けバッチ(最初のバッチが最終製品として産出される前に初期工程機器が次のバッチの製造を開始すること)」に対応することが難しいためうまくいかないようである。
このため、各社各様のやり方で、バッチ生産の工程をモデル化し、シミュレーションすることにより最適化しているのが実情である。
以上を踏まえたバッチ生産設備の基本計画(概念設計)段階のプロセスエンジニアリングとして、その初期に以下の設計図書を作成、検討することを推奨する。
(1) Operational Block Flow(OBF)
全てのプロセスエンジニアリングのベースとなる図書である。シーケンシャルな運転、操作手順をまとめたものであり、ユーザーからの情報を元にコントラクタが作成することが望ましい。尚、このOBFには反応、抽出、晶析等の製造工程に主眼を置いたもの(Process Base)と反応槽、抽出槽、晶析槽等の設備に主眼を置いたもの(Equipment Base)がある。
そして、Process Baseはユーザーとのコミュニケーション用に、Equipment Baseはコントラクタの以降の設計用に使用される。
(2) Process Flow Diagram(PFD)
連続生産設備でも作成される主要な生産機器を線図で示したものである。化学工学的な知識のない人にも視覚的に理解できるものであり、配置、配管計画のベースとなる図書である。
(3) Material Balance / Heat Balance(MB/HB)
連続生産設備でも作成される各工程又は機器での物質収支、熱収支をまとめた図書である。加熱、冷却、乾燥、移送等の単位操作機器の設計のベースとなる図書である。
連続生産設備にはない各単位操作の「所要時間」の設定が不可欠である。そして、この所要時間は後述するOTSとセットでシミュレーション対象となる。
尚、MB/HBをPFDやOBFの中に組み込んでしまうこともある。
(4) Operational Time Schedule(OTS)
前述したバッチ生産の工程表であり、連続生産設備には適用されないものである。この図書を基本に、バッチ生産運転の最適化を行うことになる。
「時は金なり」のキーとなる図書であることより、以下に簡単な検討手順を示す。
① 縦のカラムにプロセス機器を記載し、横のカラムに時刻(24時間で数週間)を
設定する。
② プロセス機器毎の単位操作(仕込み、撹拌、加熱、濃縮、払出し等)を時刻に
従ってガントチャートとして記載する。
③ あるプロセス機器からの払出しが他の機器の仕込み(受入れ)である場合は、
ネットワーク手法により結合し関係を明確にする。
④ 各単位操作の名称は上述OBFやMB/HBと整合させる。
⑤ 各単位操作の所要時間(何時から何時まで)はMB/HBと整合させる。
⑥ 夜間、休日の扱いを決め反映する(夜間、休日は停止する場合は状態維持を単位
操作とする)。
⑦ 以上により全てのプロセス機器の単位操作を表示した後、全体を俯瞰し、第1次の
総合的なバランス検討を行う。
⑧ 繰り返し操作が定常化するまで追っ掛けバッチを追加する。
⑨ バッチ運転のクリティカルパスとキャンペーン運転のクリティカルパスを明確に
する。クリティカルでない単位操作にはフロートを明記する。
⑩ 各プロセス機器の単位操作ごとに必要なユーティリティ量(瞬時流量及び必要に
応じ積算流量)を追記する。
⑪ 時刻毎の各ユーティリティの使用量を合算(山積み)した後、ピークを探し、
フロートの調整より第1次の平準化(山崩し)を行う。
⑫ 各プロセス機器の稼働率、手動操作の混雑率、プロセスそのものへの影響等を総
合的に評価する。この時②~⑫の手順で複数回のシミュレーションが必要と
なる。
尚、多くの原薬製造に適用されるマルチパーパス設備の場合は、上記図書と併せて、以下の図書も作成することを推奨する。
(5) Cleaning Design Strategy(CDS)
バッチ生産終了後の製造設備の洗浄に関する方針をまとめた図書である。
洗浄対象物、許容残留量、洗浄方法、ワースト個所の特定方法等を明確にする必要がある。
許容残留濃度が厳しい治験原薬製造設備やある種の機器を繰り返し使用して合成を繰り返していく中分子原薬製造設備にはぜひ適用すべきである。
尚、GMP上は再現性の高いCIPが望まれるが、許容残留濃度が厳しい場合や治験原薬設備のように小規模設備の場合はCOPが採用され、上記OTS上のクリティカルな操作となることが多いので注意を要する。
また、細胞培養・発酵、ワクチンや無菌原薬の場合は、更に以下の図書も作成することを推奨する。
(6) Sterilization Design Strategy(SDS)
バッチ生産前の生産設備の滅菌に関する方針をまとめたものである。
一般的にはSIPが採用されるが、コールドスポットが懸念される場合やスチームの圧力に耐えられない場合には分解してオートクレーブを掛けることがあり、上記OTS上のクリティカルな操作となることが多いので注意を要する。
尚、滅菌前の洗浄が必須であることより、上記CDSとセットで適用される。
以上、原薬製造設備の基本計画(概念設計)におけるプロセスエンジニアリングのポイントについて提言した。
原薬製造工場の基本計画にはプロセスエンジニアリング以外にも建築、空調、電気、配管、計装、制御、バリデーション等多くのエンジニアの参画が必要である。
但し、原薬製造工場の基本計画(概念設計)ステージでCAPEXとOPEXへの影響度が最も高いのはプロセスエンジニアリングである。
本稿の内容が原薬製造工場のCAPEXとOPEXの適正化(最小化)に寄与できれば幸いである。
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