新型肺炎による原薬への影響に対する日欧米の対策

 今年1月下旬、旧暦の春節直前、中国武漢のCOVID-19コロナウイルスによる新型肺炎が報道されて以来、その拡散を防ぐために、武漢をはじめとして湖北省を全面的に閉鎖するなど、中国政府は思い切った措置を取っている。
 2020年1月31日、中国では9,720人に新型コロナウイルスによる肺炎が確認された。コロナウイルスの伝搬速度の速さを懸念して、世界保健機関(WHO)は「国際的な公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern,PHEIC)」を宣言した。その後、各国政府が続々と湖北省への渡航を避け、湖北省以外の中国の地域についても渡航は慎重に検討するよう注意喚起した。
 中国は、日欧米を始め世界中に原薬などを輸出しているが、中国のデータによると、中国が輸出する原薬は世界市場の18% を占めている。この新型肺炎の状況は、世界中への原薬に影響していると言っても過言ではない。日本の厚労省やPMDAは、医薬品供給チェーンへの対策を公開していない。

 米国FDAが公開した「2019年医薬品不足報告書」には、米国市場で販売されている製品に対し、原薬工場の88%、最終製剤工場の63%が海外にあり、それぞれ14%及び8%が中国にある。2月14日、FDAがホームページに「国内外の新型コロナウイルスへ応対するFDAの対策(FDA’s Actions in Response to 2019 Novel Coronavirus at Home and Abroad)」と題する記事を掲載した。この記事にはサプライヤチェーン対策及び海外で製造される医薬品対する査察及びレギュレーション遵守のモニタリングなどが記述されている。
 サプライヤチェーンについて、重要な医薬品が不足する又はそのサプライチェーンが中断される恐れを意識して、FDAは積極的に数百社の人及び動物用医薬品や医療機器製造業者へ連絡する同時に、欧州医薬品管理局EMAなどの国際規制当局と提携し、医薬品の不足やサプライチェーン中断の兆しを予測している。米国の医薬品などの製造原料は確かに中国や東南アジアから輸入されているが、ワクチンや遺伝治療法、血液製品などはFDAに承認されてはいないので問題はない。

 海外で製造される医薬品に対する査察やレギュレーション遵守モニタリングは、中国以外の地域に対しては通常通りに実施する予定である。FDAは中国について、約年間500回の査察を実施しているが、2月に計画されている中国工場への査察は、全てを順延し、他の情報を利用して米国市場へのアクセス許可を判定することになっている。3月に計画されているルーチン査察も順延する予定である。
 

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