業界雑感 【2019年5月】

2019/06/07 その他

 医療用医薬品が薬価基準に収載された場合は、その収載された日から3ヵ月以内に製造販売して、当該医薬品の医療機関等への供給を開始するとともに、継続して供給する。あまり知られていないかもしれないが厚生労働省からの通知の1つである。新製品として承認されたら一刻も早く市場に出して他社品との差別化を図り、市場シェアを確保したい。ところが医薬品の場合、製造承認から薬価収載、市場出荷に至るまでのサプライチェーンマネジメントの中では様々な事件が起こっているのが現実である。添付文書、いわゆる能書には承認番号が印刷されていなければならないので、承認前に準備できない。通常生産では添付文書を含む包材の発注から受入れ、製造、試験、出荷判定まで2-3ヵ月かけるところを、薬価収載と同時に市場出荷したいから1ヵ月で対応とか、資材メーカーや製造工場も巻き込んで、てんやわんやの対応になる。それから思えば薬価収載から3ヵ月以内の供給開始は楽勝ともいえるのだが、ひとたび原薬や製剤バルクに品質問題が勃発すると、3ヵ月程度の時間はいっぺんに吹き飛んでしまう。
 MSDのザバクサは2月26日の薬価収載から3カ月が経過したにもかかわらず、発売開始の目途が立っていないらしい。製造後の試験で製剤に微粒子が含まれていることが確認され原因についても確認中、ということは未だ原因の特定もされておらず対策はこれからということになる。そこからバリデーション、包装を経て出荷となると数か月先になる可能性もあり、サプライチェーンの担当だけでなく、工業化の担当者や製造工場も含め多くの関係者が、さぞ大変な思いで対応しているのだろうと想像してしまう。

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執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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