ツルハシを振ったら、ゴールドではなくプラチナだった【第6回(最終回)】

第6回|結語
ツルハシを手にしたその先で何を考えるか


プロローグ:採掘という喜び

思考のツルハシを手にしてから、1年は経っただろうか。
この間、周囲やメディアが熱狂するツルハシに乗り換えたり、二刀流にしてみたり、道具によってアウトプットと自分自身の思考力がどう変わり、周りにどう影響を与えるのかを観察してきた。
手元に残ったものを見返して、改めてそれは、誰にとっての「金」にはならないけれども、それ自体が輝くわけでもなく、触れたものを変える触媒のようなものだという実感を得ている。


30年前の問いを回収するまで

採用面接での質問 「エンジニアリングとは何か、あなたの言葉で答えてください」に対し、
「エンジニアリングとは、形が成立する条件を発見し、記述し、再利用可能にする営みである。」(第5回)
へ帰着した30年越しの回収は、まさにツルハシがもたらしたプラチナそのものであった。
今なら、面接官に答えられる。だが、その答えを返したところで、当時の面接官は満足しなかっただろう。欲しかったのは私の定義ではなく、おそらくではあるが、万人が納得する答えがない問いを思考する機会を与えたかっただけだったのではなかろうかと、もし自分が面接官の立場だったなら、と今ならそう思える。


考えずにはいられない問い

自分の仕事を象徴するような、P&IDという図面形式に盾突いて、プラント設計業務を根底からちゃぶ台返ししようとした試みもあった。
「その違和感は、P&IDという形式そのものへの疑問ですか。それとも、形式が変わっても解決しない、もっと根本的な問題への疑問ですか」  (第4回)
ツルハシを振り回すことによって、自分の中の違和感は図面形式そのものにあったわけではなく、詳細を積み上げていく過程で生じる、設計思想を記録する前提がないことだった、という気付き。しかし、その気付きは、ポンプのデータシートを巡って、
「書いてあった数字を写しただけなら、お前がいる意味はない。データシートではなくコピーだ」(第2回)
とシニア回転機エンジニアに叱責された、若いころにすでにその示唆が与えられていたことへの伏線回収にもなった。
今なら分かる。数字の根拠を求めるシニア回転機エンジニアの意図が。それは設計仕様書には表立って出てこない裏側の理屈こそが、エンジニアリングを成立させ、エンジニアリングたらしめるということを。
デジタルツールが増え続けている。文書作成も、表計算も、スライドも、チャットも、圧倒的に手仕事より速くなった。情報量の増加と伝達速度の高速化で、人間の思考はどんどん飽和していった。考えずに横流しすることが増え、使わない筋肉が衰えるように、問う力も、気づかないうちに衰えていった。(第3回)

 

 

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