医薬品開発における非臨床試験から一言【第77回】

動物試験と製剤の相互連携

創薬においては臨床製剤の完成が求められます。但し、私は主に動物試験を担当してきた立場からの意見であることをご容赦下さい。臨床製剤を開発する過程において動物試験での確認が重要で、低分子化合物と高分子化合物では検討項目が全く異なります。高分子化合物を経口投与する製剤は非常に難しいように思います。製剤開発でも臨床に先立ちin vitro試験と動物試験に取り組みます。

最初のin vitro試験では、薬理ターゲットの高分子(蛋白、遺伝子)あるいは細胞/組織(培養細胞等)に対して薬理作用を示すための溶解性を考えます。In vitro試験系に溶解しないとターゲットに作用(接触)できません。化合物に溶解性が不足していると、製剤的な工夫として溶解補助剤あるいは水溶性を補助する化学構造の付与等の検討過程が加わります。

製剤的な検討は、動物試験系へと引き継がれます。初期の動物試験(スクリーニング試験)では、化合物を懸濁させるか又は溶解させて、定量的な経口投与により研究を進める場合も多いようです。自然界に存在して経口により体内に取り込まれる食品は、多種多様な化学的性質を持っており、経口で摂取した後に消化管(胃、小腸)で分泌される消化液(胃液、胆汁、腸液)で適度に消化分解されます。そのため、動物実験では化合物の懸濁液も溶解後に吸収される可能性が大きいと考えます。

しかし、医薬品として合成された化合物には、「石のような」物性を持ち、生体内で頑固に溶解せず吸収されない挙動を示すこともあります。逆に、胃酸で簡単に分解されて、有効性を示す成分が消失することもあります。これらの1つ1つの課題に向き合い、解決策を見出せた化合物が「薬」として世の中に通用しています。正に、あきらめの悪い研究姿勢が大切です。

現時点で悩みを抱えている創薬過程の化合物には、経験がなかなか通用しないのも事実です。つまり、新薬には経験の応用範囲に収まらない新規性の課題が見られます。非臨床のスクリーニング試験では新規化合物の見極めに取り掛かります。In vitro試験で「有効性」が見られるか、例えば目的とした酵素阻害がどのように評価できたか、さらに小動物を用いた試験で、吸収率と有効性の課題に取り組みます。これらの試験結果から、課題の優先順位と定量的な評価を行います。

経口剤でも、静脈内投与により有効性を確認することが必要です。溶解補助剤を用いて静脈内投与用製剤を調整し、急速投与、あるいは短時間の持続投与(経口投与のモデル実験)により、想定した有効性が観察されるか、急性毒性作用を認めないか、などの検討を行います。

静脈内投与での血中濃度推移(AUC;Area Under the Curve)を経口投与に置き換えると、経口剤が100%吸収された場合の血中濃度推移に相当します。そこで、経口投与時におけるAUCを静脈内投与のAUCで割り算を行えば経口投与での消化管吸収率が求まります。この吸収率が悪ければ、どのように製剤的な工夫が必要かの判断ができます。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます