臨床現場の再生医療【第1回】

 再生医療関連法の整備とともに謳われた「再生医療の実用化」。その中で、実際多くの企業体の参入がなされつつある再生医療業界であるが、実際にこの技術を「医療」として提供する側である臨床現場の考え方・捉え方は、けして情報が多くない。そこで本稿では、現在の医療機関・臨床現場における「再生医療に対する考え方」を軸として、本邦の再生医療(等)の位置づけをゆるっと見渡してみた。できれば、肩の力を抜いてお目通しをいただきたい。
 
▽まず、再生医療を定義してみると
 さても、再生医療(Regenerative Medicine)というのはちょっと不思議な概念だ。
 前情報なしに素直に日本語を読めば、やはりその医療技術はなにかしらを「再生」させるのだろう、という気がする。特にこの国では、ES細胞、幹細胞を筆頭とした「万能細胞」という文言とともに再生医療が登場し、その後満を持したようにiPS細胞が輝かしく世におどり出たという経緯がある。当然、多くの人が再生医療というのは失われた人体の組織や機能を、人体のかけらから再生させる技術なのだとイメージしたことだろう。
 ではあるのだが、再生医療関連の「法」における「再生医療」の定義はというと、これが少し違う。安全性確保法第2条2項(ここでは、製品ではなく医療技術として論じるため、安全性確保法の条文から引用する)では、「人の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成」あるいは「人の疾病の治療又は予防」を目的とした医療技術で、かつ「細胞加工物を用いるもの」(造血幹細胞移植等の特定の政令指定技術を除く)を用いた医療である。あえて分かりやすくまとめれば、およそ目的が上記2点ではないものを「医療」と呼ぶのははばかられるため、細胞加工物を用いる医療技術とすればコンパクトだろう。
 してみると、法的には特に「再生」は必要とされていないわけである。勿論、法による定義というのは一般用語とマッチするものばかりではないのだが、再生医療においては「再生」こそがコアな必須要素だろうと思いきや、ばっちり省かれている。目指すはあくまでも再生だが、現在の技術ではまだ再生とは呼べない!…というならまだしも、最初から再生を想定していない技術でも、細胞加工物を用いたら再生医療だという。善良な文系の方は困惑するかもしれない。
 それにしても「細胞加工物を用いる医療技術」である。これはどちらかというと英語で言うCell Therapy、細胞治療の概念に近くはないか。読んで字のごとし、細胞治療は細胞を用いた医療だ。細胞治療であるならば、再生を抜きにするのも道理。
 …いや、でもこれは、再生医療の話だったのだが。

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