奈良から発信する“品質”のコ・コ・ロ──くすりの歴史と現場のいま【第5回】
第5回 ─ GMP適合性調査の現場から(2)「任せる勇気が、組織を変えた」 ─
奈良県で薬務行政を担当している橋本です。
これまで県内の多くの製造所を訪問し、現場で働く人たちの姿を見てきました。
どの企業にも課題はありますが、共通しているのは「品質を守りたい」「より良い組織にしたい」という真摯な思いです。この思いに向き合い、品質文化を育てようと前向きに取り組まれている事例をご紹介。
適合性調査を通じて見えてきた“人と組織の成長”をお伝えします。
<1例目>寧薬化学工業株式会社(奈良県大和高田市)
「品質を良くしたい」という努力が最もよく伝わってきた企業の一つが、寧薬化学工業株式会社です。
同社は、医薬品・医薬部外品・健康補助食品の製造メーカーで1931年に丸薬の丸衣(着色料)製造会社として創業されました。
老舗メーカーでありながら、時代の変化に合わせて組織体制を見直し、品質に対する考え方を少しずつ進化させてきました。
私が調査で訪れるたびに感じていたのは、「指摘にどう対応するか」ではなく、「どうすればより良くできるか」を前向きに考える姿勢です。
各責任者が自ら質問し、改善の方向性を議論しようとする場面も多く見られます。
そのやりとりからは、防御ではなく理解に向かう姿勢―つまり、”品質”に対して学び続ける文化がしっかりと根づいていることを感じます。
1.“トップ主導”から“品質を支える組織”へ
数年前までは社長が中心に立って指揮を執る“トップ主導型”の企業でした。
同社は急激な発注増加や、新工場建設などで大きな転換期を迎えていました。
令和3年度のGMP省令改正への対応、逸脱対応、監査への対応など、同時に押し寄せる課題に対し、社長自らが最前線で判断し、現場を引っ張っていました。
「不良品を出荷してはいけない。良いところを伸ばしながら、常にGMPを意識しなければならない。」
しかし、規模拡大とともに、社長一人で全てをフォローすることが難しくなっていきます。
「社長が前面に立つと、従業員は頼ってしまう」
この課題に気づいたとき、組織は新たなステージに進みました。
各責任者に判断を委ね、「現場が考えて行動する仕組み」づくりへと舵を切ったのです。
2.“仕組み”が人を育て、“人”が文化をつくる
責任者には作業中止・再開の判断権限を与え、各部署で目標と期限を明確化。
情報共有をリアルタイムで行うことで、責任をもって自ら動く環境を整えました。
さらに、若手育成にも力を入れ、主任の下に「リーダー職」を新設。
5S活動や改善提案をリーダーが積極的に行うようになり、その部下も「次は自分がリーダーを目指したい」と意識するようになりました。
その結果、職場全体に“自分ごととして品質を考える文化”が広がり、離職率の低減にもつながりました。
3.ユニークな研修が生む「人の力」
教育面では、eラーニングや製薬関連のセミナーだけでなく、分析機器メーカーの研修など、実務に直結した学びを積極的に導入しています。
また、同社の教育研修には、ユニークなプログラムがあります。
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