最新コスメ科学 解体新書【第23回】

手術ロボットと触覚① コスメの技術をロボットへ

長いこと研究をしていると、思いがけない出会いがあるものです。そんなことを実感する出来事が十年ほど前にありました。

あるセミナーで、最近の研究成果について紹介した時のこと、2人連れの男性と名刺交換をしました。そこには「K鐵工所」という文字が・・・。これにはちょっとびっくりしました。われわれの研究対象は、ヒトがモノに触れた時に感じる触感のセンシングから、界面活性剤やナノ粒子を利用した製剤開発にわたるため、化粧品・食品・医薬品から自動車・繊維・バーチャルリアリティまで、かなり幅広い業界の方たちとお会いをする機会があるのですが、「鐵工所」に所属するエンジニアのみなさんとの名刺交換は初めてだったのです。

彼らは私の研究について根掘り葉掘り質問攻めにして帰っていきました。ちょっと気になったのは、界面活性剤を使ったエマルションの作り方から触覚センシングまで、われわれが検討しているありとあらゆるテーマに興味を示していた事でした。普通は界面活性剤なら界面活性剤、触覚なら触覚、ということで、テーマは固定しているものなのに、なぜなんだろう?

そんな疑問もすぐに解消しました。セミナーの終わった数日後にはNさんからメールがあり、みなさん、飛行機とレンタカーを乗り継いで山形までお越しいただき、共同研究契約を締結することになったのです。

彼らの目的は手術ロボットでした。「K鐵工所」では、長年の研究によって1 mmの数万分の1の鉄ナノ粒子を調製し、これを液体の中に分散する技術を開発していたのです。さらに、この微粒子を分散した液体に磁場を印加して、液体の硬さともいえる粘度を自在にコントロールするMRデバイスを開発し、これを手術ロボットに搭載することで、臓器をつまんだり、切ったり、縫ったりする時の生々しい感触を伝えることのできる、施術のしやすいデバイスを開発したい、というのです。

 

 

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