医薬品のモノづくりの歩み【第45回】

執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践

BSCとKPIマネジメント(7)

 前回に続き、工場の「モノづくり」のパフォーマンスレベルを評価するKPIについて、今回は、安定供給(Delivery)のKPIを紹介します。
医薬品の製造を担う製薬企業は生命関連企業として、医薬品を安定供給する社会的責任を担っています。言い換えると、必要な時に、必要な医薬品を必要とする患者さんに届ける責任を担っていることになり、何か一つでも損なわれると欠品(市場に必要な医薬品がない)となることを避けなければなりません。
筆者らは、過去に安定供給のKPIとして、欠品発生回数や欠品発生率を検討したことがありましたが、このKPIを設定して評価することは、欠品の発生を肯定することになり、工場が安定供給に取り組む成果を評価するKPIとしてはふさわしくありません。むしろ、安定供給のKPIとしては、製造を担う工場が欠品を発生しないように計画通り所定量を製造し、決められた期日までに出荷することで、適正在庫量を確保していく事が重要になります。ここでは、図1に示したような生産フローに沿って、関連部門の安定供給レベルを評価する納期達成率、生産計画遵守率、スループットタイム、在庫回転期間(在庫回転率)を紹介します。

図1 生産フローと安定供給を評価するKPI

(1)納期達成率
 工場が本社営業部門やSCM部門に提示した当月の出荷計画に対する当月の出荷実績の比率を算出して納期達成度として評価します。このKPIにより、工場からの出荷計画に対して、原材料起因、製造起因や品質起因、物流配送起因などにより出荷の未達や遅延となった原因と発生の頻度を分析し、生産管理部門を主に関連部門の連携による安定供給対応レベルを評価します。納期達成率のモニタリング頻度は月次単位が一般的です。また、達成率の変動理由が本社営業部門やSCM部門の納入計画変更に起因する場合は、その理由を明確にしておきます。

納期達成率(%) =
当月の出荷実績(ロット数)
当月の出荷計画(ロット数)
× 100


(2)生産計画遵守率
 納期達成度の‶出荷″に対して‶生産ロット数″を用いて、月次単位で計画された生産計画件数(ロット数)に対する該当月の生産ロット数実績の比率から生産計画遵守率を算出して、より現場寄りの安定供給レベルを評価します。

 

 

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