失敗の本質はどこにある?【第2回】

 前回 は、品質不正などの不祥事や事故を防ぎ、高業績をあげる基盤である「組織文化の重要性」をご説明しました。

 第2回目の今回は、いかにして組織文化をつくるのか、その方法を解説します。

2.組織文化をつくる方法

■心が変われば行動が変わる

 「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」

 これは、米国の哲学者ウィリアム・ジェームズの言葉です。この「人格」を、一人ひとりの意識と行動の集まりである「文化」と読み替えると、習慣化を通じて無意識の当たり前の考え方を形成する組織文化づくりのツボを、的確に表すことに納得します。

■組織文化の「3層モデル」

 「組織文化」研究の故エドガー・シャインMIT名誉教授は、次の「3層モデル」を提唱しました。捉えどころのない文化を巧みに表したもので、まずイメージをつかんで下さい。

 組織文化は、次の3要素から成り立ちます。【図―3】

【図-3】3層モデル

 

 第1は、「目に見える要素」です。人の行動や振舞い、組織や制度などです。

 第2は、「共有される価値観」です。経営理念や「お客さま本位」といった信条などです。

 第3は、意識できないくらい「当たり前になっているものごとの前提や考え方(基本的想定)」です。感じ方、考え方、受け止め方、暗黙のルールなどです。

■見えにくい部分が本質的課題

 組織文化は、海に浮かぶ氷山のように、水面上に第1層が現れますが、水面下に第2、第3の要素が隠れ、内外からも特徴が見えにくくなっています。

 第3層の「当たり前になっているものごとの前提や考え方」は、個人で言えば思考の前提や枠組みである「メンタルモデル」に対応します。
 
 2011年の東京電力の原子力事故は、直接的には大津波が原因でしたが、全電源喪失や過酷事故が「起きる筈がないだろう」という思い込み(いわゆる安全神話)が広く組織の内外に浸透した結果、継続的な安全性向上努力が足りず、事故の未然防止や拡大防止ができなかったものです。

 これは、「安全最優先」との理念を持ちながら、第3層の「当たり前になっているものごとの前提や考え方」が理念とは離れたものに歪み、一人ひとりの行動に影響していたため、と多くの根本原因分析で指摘されます。

 つまり、「安全最優先」と頭では分かっていても、そうは言っても「1000年に1回の大津波が、まさか来ることはないだろう」と、都合のよい「正当化理由」(前回 ご説明)を立てる思考パターンにより、課題に真摯に取り組む本来の姿勢から逸脱した結果です。本当に悔やまれてなりません。

■どのように組織文化をつくるのか

 組織文化は、最初からある訳ではありません。新たに組織がつくられた際、創業者が自身の価値観や信念、創業目的などを経営理念に定め、社員の心や行動を意識的に揃える作業を熱心に行います。

 そうした強固な組織文化づくりに成功した企業がイノベーションを起こして競争を生き残り、そうでない企業が消え去ることは、歴史の示すところです。

 その際、組織文化をつくる方法は、「習慣化」に集約されます。

 

 

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