ゼロベースからの化粧品の品質管理【第55回】
―製造所における衛生管理の具体的な展開について―
ISO 22716は、化粧品製造におけるGMP(Good Manufacturing Practice, 適正製造規範)を定めた国際規格であり、その目的は品質と安全性の確保にあります。前回は、「組織と役割」に焦点を当て、日常業務を遂行する職制に基づく組織をどのようにGMPの観点から構築すべきかについて述べました。
GMPに関する議論では衛生管理が中心となることが多いですが、GMP体制の整備にあたっては、品質保証全体の仕組みが「3原則」に基づいて適切に運営されていることが極めて重要です。特に近年、製薬企業におけるコンタミネーション(汚染)事故を受け、交差汚染リスクへの関心が高まっています。
製造所における衛生管理は、品質および安全性の確保に直結する要素であり、ISO 22716の要求事項は各部門で運用されているものの、組織全体として統一的な理解が不足しているケースも見受けられます。その結果、リスクが明確に定義されず、形式的な手順書の運用に留まる事例も少なくありません。
そこで、今回は衛生管理における重要点、主なリスクとその対応策、および監査におけるチェックリストについて解説します。
1.化粧品製造所における衛生管理に関する重要事項と主なリスク
化粧品は薬機法により、品質、有効性、安全性の確保と、保健衛生の向上を図ることが求められています。そして、使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止を図るため、適正製造規範(GMP、化粧品は適用除外)やISO22716では具体的な展開について要求事項が示されています。
衛生管理に関しては、次の項目が必要とされています。
① 製造所の環境管理:空調、ゾーニングおよび清掃・消毒、水の管理
・製造エリアの清掃・消毒手順の確立と実施
・空調管理による微生物・異物混入リスクの低減
・適切な廃棄物処理システムの導入
・製造エリアの清掃・消毒手順の確立と実施
・空調管理による微生物・異物混入リスクの低減
・適切な廃棄物処理システムの導入
② 作業者の管理:手洗いと手指消毒、着衣・保護具、健康管理
・作業員の健康管理(疾病時の対応、健康状態の把握と記録など)
・作業エリアにおける適切な服装・手指消毒の実施
・定期的な教育・訓練の実施
・作業員の健康管理(疾病時の対応、健康状態の把握と記録など)
・作業エリアにおける適切な服装・手指消毒の実施
・定期的な教育・訓練の実施
③ 原料・材料の衛生管理:受入れ検査、保管、異物対策
・受入検査と保管条件の厳格な管理
・交差汚染を防ぐためのゾーニング(区域分け)
・使用期限やロット管理の徹底
・受入検査と保管条件の厳格な管理
・交差汚染を防ぐためのゾーニング(区域分け)
・使用期限やロット管理の徹底
④ 製造工程:器具・装置の洗浄・消毒基準、異物対策、交差汚染対策
・製造エリアの清掃・消毒手順の確立と実施
・空調管理による微生物・異物混入リスクの低減
・適切な廃棄物処理システムの導入
・製造エリアの清掃・消毒手順の確立と実施
・空調管理による微生物・異物混入リスクの低減
・適切な廃棄物処理システムの導入
⑤ 衛生管理のモニタリング:微生物対策、防虫防鼠、衛生管理の記録
逸脱管理、是正管理、内部監査と継続的改善
逸脱管理、是正管理、内部監査と継続的改善
衛生管理が不十分な製造所では、製品が微生物や異物に汚染されるリスクが高まります。特に、化粧品は防腐剤を含んでいても、保存中や使用時に細菌やカビが繁殖する可能性があります。
汚染された製品が市場に出回ると、消費者の皮膚トラブルや感染症を引き起こし、企業の信用を大きく損なうことになります。化粧品における皮膚トラブルの要素は、紫外線吸収剤や美白成分、防腐剤等の成分、体調の変化の要素や使い方の誤り等、複雑ですが、微生物の代謝物や異物によって起きるケースもあり、ほぼ毎年、製品の回収が余儀なくされている事例があることから、衛生管理の徹底重要で、場合によっては企業の存続にも直結します。
汚染された製品が市場に出回ると、消費者の皮膚トラブルや感染症を引き起こし、企業の信用を大きく損なうことになります。化粧品における皮膚トラブルの要素は、紫外線吸収剤や美白成分、防腐剤等の成分、体調の変化の要素や使い方の誤り等、複雑ですが、微生物の代謝物や異物によって起きるケースもあり、ほぼ毎年、製品の回収が余儀なくされている事例があることから、衛生管理の徹底重要で、場合によっては企業の存続にも直結します。
現場の管理としては、次の事項が重要なチェックポイントとなります。
① 製造環境の衛生管理
① 製造環境の衛生管理
●換気回数、空気の流れ方向の確認:暴露した原料、バルクの開口部に異物が入り込む動線になっていないか?
●各クリーン度に対応した清掃、定期敵な消毒の実施はどうなっているか?
●フィルター、エアーの吹き出し口の管理は?
●各ゾーンのクリーン度に対応した入室ルールは徹底されているか?
② 作業者の衛生管理
●素手と手袋着用のルールと洗浄・消毒のルールは?徹底されているか?
●異物汚染への対応:イヤリング、付けまつげ、マニュキュア、爪の長さ、頭髪・体毛の落下防止は具体的に示され、徹底されているか?
●感染症状、露出した部分にキズがある人の管理と立入制限の管理方法は?
③ 原料・材料の衛生管理
●受入試験の実施と保管中の汚染防止は?
(表面のほこり、地面の直置き、破損品がないか?)
(表面のほこり、地面の直置き、破損品がないか?)
●保管環境の温度・湿度管理の基準と管理方法は?
(例:25℃以下、湿度60%以下等)
(例:25℃以下、湿度60%以下等)
④ 製造器具・設備の洗浄・消毒
●使用前、使用後の洗浄・消毒の手順と有効期限の設定は管理されているか?
●洗浄剤・消毒剤の濃度、保持管の規定はどのように徹底されているか?
●交差汚染防止のための用具類の使い分け、使用ゾーンの区分、有効性の確認方法の確立はどのように展開されているか?
⑤ 交差汚染、異物混入対策
●各ゾーン間の移動時の人の着衣や物の取り扱い方、入出時の着衣、手洗い等のルール化は?
●エアーシャワー、粘着ローラー、吸引機、ふき取り用モップ掛け等のルール化は?
●ロット別管理、端数管理、汚染リスクのある物の物理的隔離は徹底されているか?(粉体と液体、ガスを発生するものの交差汚染対策は?)
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