業界雑感 2018年1月

1月22日に第196通常国会が召集された。憲法改正に向けた動きがどこまで進むかが最大の焦点と言われているが、働き方改革や生産性革命に関する議論がどこまで進むのか、注目していきたい。
生産性でよく出てくるのが、日本の労働生産性はOECD加盟35ヵ国中20位、主要先進7カ国でみると、1970年以降最下位の状況が続いている、という話である。テレビをはじめとするマスメディアでは労働生産性に関する詳細が伝えられることはほとんどなく、主要先進7カ国で最下位とか、OECD加盟35ヵ国中20位とかいった数字だけが伝えられるので、さも日本の労働者は働きが悪い、といった印象になってしまう。2000年くらいから10年近く、医薬品企業で国内外の工場の原価や業績評価を見てきたが、日本の工場の生産性がそんなに悪いという感じは全くなかったと記憶しているのだが。
ここでいう労働生産性が、どう計算されているかというと、「労働生産性=GDP/就業者数または(就業者数×労働時間)」 ということなので、日本全体の平均としてのマクロ的数値であり、企業や業界レベルで労働生産性を語る際は、この数値に惑わされてはいけないと思っている。製造業における労働生産性の計算では、付加価値労働生産性が用いられ、「労働生産性=付加価値額/就業者数または(就業者数×労働時間)」となる。付加価値額の計算方法もさまざまだが、製造業の場合は、中小企業庁の『中小企業の経営指標』による、「売上高-(原材料費+外注加工費)」の定義がわかりやすいかもしれない。
医薬品企業として見ていくのであれば、この労働生産性は一つの指標になるのかもしれないが、医薬品工場で労働生産性を考える場合には、これでも誤解を招くことになる。医薬品の場合は薬価制度によって価格が決められ、それが薬価改定により年々引き下げられていく。原材料費や外注加工費でコストを下げることは原材料サプライヤーやCMOに負担を強いることになり、今の時代にそぐわない気もしている。「付加価値額=売上高-(原材料費+外注加工費)」の式ではどうにもしっくりこないので、「付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費」としてみると、まだ説明がしやすい。一見、人件費を増やせば付加価値額は上がるような式だが、人件費を増やせば製造原価が上がるので営業利益は減少し、さらに労働生産性の式の分母は「就業者数または(就業者数×労働時間)」なので生産性そのものは下がってしまう。設備投資も同様に付加価値額は上がっても製造原価も同時に上がったのでは営業利益が減少してしまう。製造原価を下げる効果なのか、あるいは分母となる「就業者数または(就業者数×労働時間)」を改善する効果なのかしっかり見極める必要がある。
すでに始まりつつある人口減少にむけ、医薬品工場が持続的に成長し生き残っていくためには、ロボットの活用をはじめとして、IoT、AI、ビッグデータなどの革新的技術を駆使して生産性を押し上げることが必須となるであろう。という結論に変わりはないのだが、労働生産性を上げるためのポイントは分母の改善であり、その根幹となるのは間接部門の業務効率化と、直接部門の稼働率向上といった、普段から言っている原価低減活動である。長々と書いてみて腑に落ちた次第である。
※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。
生産性でよく出てくるのが、日本の労働生産性はOECD加盟35ヵ国中20位、主要先進7カ国でみると、1970年以降最下位の状況が続いている、という話である。テレビをはじめとするマスメディアでは労働生産性に関する詳細が伝えられることはほとんどなく、主要先進7カ国で最下位とか、OECD加盟35ヵ国中20位とかいった数字だけが伝えられるので、さも日本の労働者は働きが悪い、といった印象になってしまう。2000年くらいから10年近く、医薬品企業で国内外の工場の原価や業績評価を見てきたが、日本の工場の生産性がそんなに悪いという感じは全くなかったと記憶しているのだが。
ここでいう労働生産性が、どう計算されているかというと、「労働生産性=GDP/就業者数または(就業者数×労働時間)」 ということなので、日本全体の平均としてのマクロ的数値であり、企業や業界レベルで労働生産性を語る際は、この数値に惑わされてはいけないと思っている。製造業における労働生産性の計算では、付加価値労働生産性が用いられ、「労働生産性=付加価値額/就業者数または(就業者数×労働時間)」となる。付加価値額の計算方法もさまざまだが、製造業の場合は、中小企業庁の『中小企業の経営指標』による、「売上高-(原材料費+外注加工費)」の定義がわかりやすいかもしれない。
医薬品企業として見ていくのであれば、この労働生産性は一つの指標になるのかもしれないが、医薬品工場で労働生産性を考える場合には、これでも誤解を招くことになる。医薬品の場合は薬価制度によって価格が決められ、それが薬価改定により年々引き下げられていく。原材料費や外注加工費でコストを下げることは原材料サプライヤーやCMOに負担を強いることになり、今の時代にそぐわない気もしている。「付加価値額=売上高-(原材料費+外注加工費)」の式ではどうにもしっくりこないので、「付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費」としてみると、まだ説明がしやすい。一見、人件費を増やせば付加価値額は上がるような式だが、人件費を増やせば製造原価が上がるので営業利益は減少し、さらに労働生産性の式の分母は「就業者数または(就業者数×労働時間)」なので生産性そのものは下がってしまう。設備投資も同様に付加価値額は上がっても製造原価も同時に上がったのでは営業利益が減少してしまう。製造原価を下げる効果なのか、あるいは分母となる「就業者数または(就業者数×労働時間)」を改善する効果なのかしっかり見極める必要がある。
すでに始まりつつある人口減少にむけ、医薬品工場が持続的に成長し生き残っていくためには、ロボットの活用をはじめとして、IoT、AI、ビッグデータなどの革新的技術を駆使して生産性を押し上げることが必須となるであろう。という結論に変わりはないのだが、労働生産性を上げるためのポイントは分母の改善であり、その根幹となるのは間接部門の業務効率化と、直接部門の稼働率向上といった、普段から言っている原価低減活動である。長々と書いてみて腑に落ちた次第である。
※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。
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