新・医薬品品質保証こぼれ話【第44話】

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

“余裕をもつこと”と“相手の立場に立つこと”

令和6年(2024年)は、元日夕刻に発生した能登半島における大地震と、翌2日の羽田空港での日航機と海上保安庁の航空機の衝突炎上という、ショッキングな出来事で始まりました。能登の大地震(最大震度7:「令和6年能登半島地震」)の被災の状況は夜明けとともにその甚大さが明らかになったものの、多くの道路が山崩れや陥没などにより寸断され、確認される死者数(215人:1月12日現在)が日ごとに増える中、今なお被害の全容が見えない状況にあります。

また、羽田の滑走路上で発生した航空機の衝突事故は、炎の燃え盛る中、旅客機の乗員・乗客の冷静な対応により379人全員が奇跡的に脱出できた一方、海保機の乗員は機長以外の5人が尊い命を落としました。事故の原因については、管制官と機長のやりとりの誤認や判断ミス、機長の滑走路上の航空機の目視確認(視認)の問題などが取りざたされていますが、未だ原因は明らかにされていません。

航空機事故に詳しい専門家は「夜間は暗闇の中で滑走路周辺に様々な照明が点在し、日中とは全く様子が異なることから、本来、滑走路上の航空機の視認が容易ではなく、その上、離着陸を頻繁に繰り返す羽田のような飛行場の場合、機長は着陸に際し緊張を余儀なくされるため“余裕のない状況”に置かれ、着陸許可を得たと認識したあとは滑走路上に航空機がないと思い込み、着陸操作に集中するあまり視認のレベルが低下する」との見解を示しています。

航空機の操作に限らず、人が、“余裕のない状況”に置かれると様々なミスをすることは、多くの人が経験し理解していると思いますが、余裕のなさにより生じる“焦り”は、ヒューマンエラー(人為ミス)発生の最も基本的な原因の一つとされ、最初に留意すべき人為ミス対策として挙げられます。しかし、変化が急で何ごとにもスピードが求められる今の世の中においては、何事につけて“余裕をもって事にあたる”ことが容易ではないのが現状です。

“余裕がない状況”の下に生じる問題は失敗やミスだけではありません。“組織における良好な人間関係の構築”といったことも、余裕がないと難しくなります。人は “心に余裕があれば寛容になる”ことができ、日常のちょっとした不愉快な出来事にも落ち込むということがありませんが、目の前のことでいっぱいになったり、深刻な心配事や不安などで心の余裕を失うと、ほんの些細なことでも人の言動が気になり、気が滅入ったり、時には怒りが込み上げてきたりします。こういう状況下では、職場などにおけるコミュニケーションにも支障を来し、良好な人間関係を結ぶことが難しくなります。

組織における人間関係の良否は信頼関係の構築に直結し、そのことが、個人あるいは企業等組織体のパフォーマンス(成果・業績)に大きく関係することから、“心に余裕のある”状態を保てるよう各自が自己管理することが重要となります。組織で生じる様々な問題に加え、それぞれに個人的な問題や家庭の事情などもあることから、常に心の平安を保つことは容易ではありませんが、組織人である以上、上記のような理由から、心に余裕を保てるよう努めることが大切です。このことは、製薬工場における製造や品質管理の業務を推進する上においても重要であり、様々なトラブルの回避の基礎となる要件と言っても過言ではありません。
 

 

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