新・医薬品品質保証こぼれ話【第43話】

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

“目に見えない大切なもの”と品質確保

医薬品の品質確保のために実施される教育訓練の中心は、製造手順や試験方法などを知るための教育、つまり“SOP教育”といったものになりますが、こういった目に見える知識や業務に必要な技能だけでは、目的を全うできないことは多くの方が経験されていると思います。医薬品の品質を確保するためには、実務に直結する知識・技能に加え、“目に見えない大切な何か”、一見、業務と関係がないと思われるような部分に、とても重要なものが潜んでいるように感じます。このことは教育訓練に限らず、医薬品の品質保証を推進する上において全般に言えることではないでしょうか。

医薬品の品質と安定供給を確保するためには、その要件として一般に認識されているGMP省令等法令の遵守や、品質保証体制の整備といったことが求められ、官民それぞれの立場からこれを目途に様々な取り組みが行われ、昨今は特に、製薬企業の度重なる法令違反や品質不祥事から、これらの取り組みが強化される状況にあります。しかしながら、依然として目立った状況の改善が見られず、供給不安解消への道のりがさらに遠のいている感さえあります。今回はこの状況を鑑み、冒頭述べた、“目に見えない大切な何か”について考えたいと思います。

この年末と年始(2024年)はコロナ禍の閉塞感からの脱却により、忘年会や新年会が以前のように通常の形で実施されたケースが多かったのではないでしょうか。コロナ下ではオンライン会議、オンライン授業はもとより、オンライン診療、オンライン飲み会など、様々なことがリモートで行われ、それなりにメリットや新たな発見もありました。しかし、お互いの顔を画面上に見ながら、情報共有や議論を行うという状況は、やはり、“どこかぎこちなく物足りない”、と多くの方が感じられたのではないでしょうか。そういう状況から一転、現在は多くのケースで、以前のように、実際に会い、互いに顔を見合わせて会議などを行う状況に戻り、改めて、その心地よさを実感されている方も少なくないでしょう。

企業等において人が職場に集まる意味は、与えられた仕事をこなすことだけではありません。同僚との立ち話や雑談、“アフター5”の居酒屋での談笑、こういった状況下で新たな発想や斬新なアイデアを得ることも少なくありません。このような機会は職場に集まることによりもたらされます。リモートワークやオンライン会議には経費節減などの利点も認められますが、これを多用あるいは常態化することにより、上記のような一見、無駄と思える“目に見えない大切な機会”を削ぎ落していることになります。

上記のような考え方、また、世の中の趨勢から、“豊かさや便利さ”といった、これまで多くの人が追い求めてきた“経済やモノの保有”、また“合理性”を重視する考え方から、“心の豊かさ、人のふれあいや温もり”といったことを価値の中心に据えることの大切さを感じている方も少なくないでしょう。大仰に言えば、“人生観・価値観の転換”、このことが、コロナ禍の経験を経た今、様々な領域において求められているのではないでしょうか。
 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます