GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第72回】

教育訓練

1.ウェルビーイング(well-being)

「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」とされています。

 GMP省令が改正され、教育訓練が厳しく求められている。受講者が真に理解し、その受講内容を習得できており、業務を適切に遂行しているだろうか。その医薬品を摂取したものが、その患者の病気から治癒しただけでない。特に慢性疾患においては、肉体的な面だけでなく、精神面も満たされるものでなければならない。患者がその服用を忘れてしまう医薬品では、その患者の精神面を満足させていないものである。薬を飲まなければならないとプレッシャーがあるものも、精神面に圧力をかけ、かえって、病気を軽減させることができないかもしれない。神経面を悪化させるかもしれない。医薬品の供給者が患者の幸福度を考慮し、情報の提供を充実させなければならない。GMP省令には、医薬品の情報面などについて、規定していないが、医薬品供給者として、その医薬品の服用者の状態を考慮し、その医薬品を服用する患者を満足させなければならない。

 GMP省令で求められている点は、製造する医薬品の品質を確保するために必要な品質システムの構築である。そのためには、医薬品の製造管理、品質管理等の従事者への教育訓練を充実させなければならない。多くの製造業者で行われていたGMPの教育訓練は、各従事者の教育訓練の内容を真に理解し、その業務を行うにあたり、支障ないものとすることができたか確認しなければならない。確認が十分できないために、GMP違反となるような事象を招いている。教育訓練が形式的なものとなり、手順書を読むだけで、その求められる品質を維持するための能力を取得できない事例が多い。受講者がその教育訓練内容を理解したかを評価しなければならない。受講者によって、当然理解度は異なるであろう。理解レベルに差があることを考慮しなければならない。その能力に差があるとき、異なる教育訓練方法を行う必要があるかもしれない。その人を満足させるためにどのような教育訓練が必要かを検証する必要がある。

 小学生、中学、高校において、子供たちの教科内容に対する学力や運動能力に差がある。勉学における優等生でも、科目により能力の違いがある。それが、会社勤めになって、学力差がないだろうか。その業務が経験するタイミングが異なれば、違いがあるのは当然である。その違いを確認せず、同じ業務に就任すれば、当然、業務を実施した際、差が生じるのは当然である。逸脱事例が発生してから、教育訓練の不備を唱えるのでは遅いのである。教育訓練を行う際、その受講者に差がないことを確認する必要がある。受講者がその教育訓練内容を理解し、その業務を適格に実施できる能力を習得したかを確認しなければならない。教育訓練を行う際、各受講者の能力に差がなく、習得できたことを確認しなければ、適切な教育訓練を行ったといえない。

 

 

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