知的生産性を革新する組織構造・空間構造【第10回】

10. 革新的な施設の具体例-2

A社研究所

目的
A社は化粧品と機能性食品を製造販売している会社である。この研究所は1999年に完成したが、研究所の計画を始めたのは1997年からである。
この時の課題は、創業から順調に伸びた成長企業がある時点に達した時に現れてくる成長の壁の突破であった。
創業者はあらかじめこの成長の壁を予想し、それを乗り越え、さらに成長するために、革新的な製品の開発ができることが最も重要と考えていた。
そのためには新しい革新的なコンセプトの研究開発施設が必要であった。
成長の壁を乗り越え目指すマイルストーンは、研究所計画時点での売り上げ、300億円強の企業を、1,000億円の売り上げを越す企業にすることであった。


図-23 A社 研究所 外観

 
研究組織の概要
研究組織は基本的にコスメティックとサプリメントの2つのグループの構成であった。
創業以来全員参加の体制で開発を行ってきた、新しい研究所でもその考え方を維持して行きたいということであった。
全員参加のワンファーム型の組織を発展させる空間構成が必要と考えた。
この研究所は開設当初は60名程度の研究員数でスタートすることになったが、目標
を達成すると120名程度の組織に拡大すると予想し、研究所スペースもその人数に
対応した法規上限界のスケールになっている。
 
開設時から9年で売り上げは3倍に伸び、マイルストーンである1,000億は達成され、研究者も120人を突破し、既に飽和状態になった。
研究所はここ一か所だけであるので、研究組織の構造と空間構造を含めどのような展開を図るかが、今後の成長を左右する大きな課題になる。
この結果は当然A社の企業努力によるものであるが、ワンファームの研究組織と一体化したこの空間構造も大きく貢献していると考えられる。

空間構造の概要
この建築は右下がりの斜面地に建っていて、地下1階、地上4階になっている。
地下は機械室、倉庫、駐車場等のサービスエリア、1階がメインエントランスなどパブリックエリア、2階以上が研究エリアという構成になっている。


図-24 A社 研究所 断面パース
 
断面パースを見るとその空間構造が良く分かる。
中央の吹き抜けの周りは研究者のオフィスで、吹き抜けに面してガラスのないオープン状態になっている。
上部のトップライトから自然光が入り、閉ざされた内部にいながら開放感がある空間構造になっている。
1階はパブリックスペースで外部と研究者コミュニケーションを図る空間なっている。
エントランスホールから吹き抜けを見上げる中央の広場に入る。上階のオフィスから全員が入館した外部の人を視認することができる。
広場の周囲に打ち合わせコーナー、更に通路の外側は会議室や食堂、展示室、更衣室などの共用施設が取り囲むレイアウトになっている。
2階以上の標準階は研究エリアで、中央の吹き抜けの周りはオフィスが取り囲み、さらに通路の外側が実験エリアになっている。

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