理系人材のための美術館のススメ【第10回】

2023/04/14 その他

季節がいいのでたまには遠足

第10回「季節がいいのでたまには遠足」

 美術館にあまり足を運ばない方向け、「理系業界に美術館のご利用をプッシュしてみよう」という本コラム。
 執筆と掲載の間にはタイムラグが生じますが、今現在世の中は早すぎる桜にこんちくしょうと言いながら、必死に花見タームを確保しようとする人々で溢れています。4月の頭に桜祭りを設定した各地域の方々のご苦労をくみ、月頭はたとえ葉桜でも花見に行こうと思います、まああれだ、お酒さえあればなんとか…(昨日通りすがりに駅で「○○庭園の桜:葉桜」という悲しい張り紙を見た)。
 このいい季節、散歩といわずちょっとばかり足をのばして、なかなか行かない美術館に行ってもいいかもしれません。今回はそんな「行かない町の美術館に行く方法」です。
 

【散歩というより遠足気分】
 桜開花!と相なったその週末、立川まで行ってきました。
立川といえば、乗降客数が「住みたい町上位常連の吉祥寺」を抜いたよ!…というニュースを数年前に見た記憶がありますが、別に街が賑わっていたからといって区内から都下に下る理由はなにもなく、降りたのいつだっけな?ってくらいに気分として遠い町です。むしろ五倍くらい遠い甲府のほうが、まだ山梨県立美術館に行く分なじみ深い(あと山梨ヌーヴォーを楽しみにも行く)。
 しかしここに近年、たましん美術館さんがオープンしています。まだ行ってません。しかも今回は「うっわこれ観たいな!」ってテンションの上がるコレクション展を開催してくれています。じゃあなにがなんでも会期末3月26日までに来訪せねば!…って、いや年度末の忙しさをどうかいくぐるんだよ、という気持ちと、そうは言っても立川って行くかあ?…みたいな気持ちとで迷ってしまったわけです。多摩在住の皆様すいません、しかし多摩在住でなんの理由もなく渋谷松涛とか行きます!? 行かないでしょう!?
 この、「散歩と呼ぶには微妙な距離+その場所に用がない」という現象はとても厄介で、これで何度美術館に行きたい心を折られたか分かりません(叫びよ届け世田谷美術館に)。よほど暇で元気ならともかく、年度末だと言っているのだこんちくしょうめ。てか再生医療学会は目前だそっちの荷物をつめろ自分。
 そんなわけで、解決策として
 「いい酒を手に入れたので昼間っから宅飲みをしよう、君んちで頼む」
 というメッセージとお歳暮にいただいた獺祭の写真を、国立在住(※国立は立川の隣)の人間を含む知り合いメンバーに送り付けてみました。獺祭の力はすごいので、全員が諸手を上げてくれました、いや喜んでいただけてなにより。

【人の力も借りてみる】
 そんなこんなで、このたましん美術館さんの「小貫政之助展」は大変すばらしく、今のところ本年のベストです。行って良かった…いやもうダダ雨だったので館内独り占めだったしサイコー。こういうことがあるから機会を逃さないというのは大事です。
 桜が咲いたというのにひどく寒い雨のせいで、国立も混むことなく(国立桜並木は近隣の桜の名所)、宅飲みのお供は自動的に寄せ鍋になりました(「鍋だ」「鍋だなこれ」「鍋だろう」と全員同意するくらい寒かったなんだろうあれ)。
 このように「で、美術館は無事行ってきたの」「行ってきました図録が雨で湿気る(涙)」くらいの、承知はしてるが放っておいてくれる人の力を借りるのは一手です。
 ただこの面子は、奄美大島に旅行に出た際には
「なんか聞くところによると、ここに有名な画家の記念美術館があるとかなんとか…」
「田中一村ですね、ありますよ! まかりまちがって雨が続いてしまった場合、車ですーっと乗りつけてそこに私を置いていくというのはどう」
「言うと思ったが行かないわ、スキューバとマングローブカヤックとサップのことを考えて一生懸命てるてる坊主作れ」
 と相なった人たちなので(※第一回コラムで「人間の作ったものはおしなべて興味がない」と言い捨てていた人物を含む)、必ずしも協力が得られるとは限りません。残念なことに何回奄美に行っても天気が良くて、スキューバは楽しく行われ、田中一村記念美術館に行く機会はありませんでした無念です。
 しかし、その惜しかりし田中一村は、本年上半期に箱根小涌谷の岡田美術館にて「若冲と一村展」をやってくれているため、こちらでリベンジですよ! そんなわけで(二度目)、
「かくかくしかじかでどうしても小涌谷!」
「じゃあポーラ美術館と組み合わせて、あとはのんびり温泉入って美味しいもの食べよっか」
 と、言ってくれる人間を厳選し、箱根の宿を確保しました。よしよし。最後にLINEで「飲み放題付けたい?」…と聞かれた意味は分からないけど、まあいい。
 

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執筆者について

鮫島 葉月

経歴

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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