業界雑感 【2019年12月】

 昨年暮れのビックニュースは武田薬品工業のシャイアー買収により、日本発のグローバルメガファーマがようやく誕生する、といったものだった。実際に買収による増収効果がフルに貢献するのは来春の2020年3月期決算からなので、まだ売上統計等に出てきておらず実感はないのだが。
 今年に入っても海外大手製薬によるM&Aが続き、グローバルな製薬業界の再編が一段と進む結果となった。1月にはブリストルマイヤーズ・スクイブが米セルジーン買収合意の発表があり、その買収額は武田・シャイアーを上回る約740億ドル(約8兆円)に上るとのこと。その後もイーライリリーは米ロクソ・オンコロジーを買収。他ではロシュが米スパーク・セラピューティクスを、バイオジェンが米ナイトスターを、ファイザーも米アレイバイオファーマを114億ドル(約1.2兆円)で買収など、遺伝子治療関係の企業にも注目が集まっている。さらに6月にはアッヴィがアイルランドのアラガンを630億ドル(約6.8兆円)で買収すると発表された。売上高は単純合算で485億ドル(約5.2兆円)となって来年には世界4位のメガファーマが誕生する。
 一方で今年の日本の製薬業界はというと、アステラス製薬が米国のバイオテクノロジー企業Audentes社を約30億ドルで買収するという発表があったが、業界再編につながるようなM&Aといった感じではなく、むしろ工場の売却整理や希望退職の募集などが目についた年だったような気もする。そんな中で、インド後発薬大手のルピンが子会社の共和薬品工業を投資ファンドのユニゾン・キャピタルに売却し、日本市場から事実上撤退することの発表があった。共和薬品がルピンの傘下に入ったのは2007年で、16年には塩野義製薬から精神病向け治療薬や抗がん剤など「長期収載品」21品目を154億円で取得したことも記憶に新しいのだが。今後は重点市場と位置づける米国やインドに経営資源を集中するとのこと、ということはもはや日本は医薬品市場として重要ではないと見限られてしまったということなる。

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