再生医療等製品の品質保証についての雑感【第86回】
第86回:細胞製造の品質マネジメントシステム (16)
~ 逸脱をアクティブに活用できる是正・予防(CAPA)システムの構築 (2) ~
はじめに
今回も、「逸脱」を有意義に活用することによる、品質マネジメントシステムの改善(成熟)の可能性についてお話しします。第84回で、「設計において必須なのは管理戦略であり、その道具として最も重要なのがモニタリング」とお話ししました。製品のライフサイクルを通じてシステムを維持するには、生産数の変更などを伴う承認後変更管理実施計画(PACMP)も考慮した、製造品質の維持に向けた、改善活動が必須となります。そのためには、工程理解に基づく、リーズナブルな根拠に準じた管理指標(管理限界)を探索することが求められます。
● 先ず工程を安定させなければ改善は難しい
現状把握と解析は、必要なモニタリング評価を実施し、データを蓄積することで獲得できます。筆者の極論ですが、製品品質は、製造中の工程モニタリング(インプロセスモニタリング)と環境モニタリングにより、トレンドと管理限界(プロセスが安定状態を維持できる限界)を理解することで、ようやく、有効性と安全性が継続して維持できると考えます。実際、PIC/S GMP ガイドライン等でも、安定性管理プログラムの要求が示され、プロセスモニタリングは、環境モニタリングの汚染管理戦略とともに、重要性を示唆していますが、これらのOOT(Out of Trend)やOOC(Out of Control)の管理は、前回お話しした通り、一定以上、プロセスを安定させていなければ解析が困難です。
特に細胞製造においては、細胞を扱うことにより生じるばらつきが起きるため、少ない実施例でいつも通りの状態を把握することは難しいです。そのため、生産初期においては、何がいつも通りとなるかの考慮を含め、製造再現性に資するプロセスのインプットや作業中の動作を評価することが重要になります。作業中の動作に依存する再現性とは、パラメトリックな手順により、作業時間や加速度、振動などについて、作業者間でのばらつきを最小限にすることです。インプットに依存する再現性とは、細胞原料の個体差への考慮ももちろん必要ですが、それ以上に、解凍後の細胞活性や、播種濃度、播種密度など、37℃に加温する直前の状態が重要と考えます。これらはプロセスの環境特性として重要なプロセスパラメータ(CPP)となるので、インプロセスモニタリング値の安定化のためには不可欠な要素と考えます。
環境モニタリングについても同様です。生産開始時においては、必ずしも施設の稼働率は高くないため、原材料と作業者動線からの影響はほぼ生じないと考えます。(この時点で逸脱が報じる場合は、設計適格性に問題があると思います。)そのため、いつも通りの評価は、バッチ単位で環境を占有するような生産を除けば、一定の生産数が得られ、繰り返しの頻度が上がった時点で解析を始めることが適切と考えます。
● 現状の製品規格値は製造管理の道具にはならない
工程が安定したらモニタリングを開始します。ここで重要となるのがトレンドの確認です。トレンドとは、前回に説明した通り、予測通りに「過去と同じ値を示す」ことです。製造管理者は、工程の安定化とともに過去と同じ値に確信が持てるようになり、運用が軌道に乗ると考えます。
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