医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第69回】
国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本製薬工場に求められるLock Out & Tag Outの運用」
1.製薬企業のあるべき姿
製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。日本国内外にて製薬工場で働く日本人も外国人も、夫々の工場で日々働いています。GMPは医薬品の品質を守り、患者様を守っています。一方、HSEは工場で働いている従業員の皆さんを守るべく、HSE(健康安全環境)グローバルスタンダードの安全や健康被害リスクを低減するマネジメントシステムで運用されています。近年、この健康被害のリスク低減は、国際法によって企業のトップに「サプライチェーンを巻き込んで従業員を守りなさい」という意味の人権尊重方針のコミットメントを作成し、公開するよう求めています。さて、日本の歴史的な安全活動であるKYTはとても良い歴史的な活動です。作業前にこれから実施する作業の危険を予知して、安全意識を高める事が出来ます。
そして、企業や工場の目標「災害0をKYTで達成しよう」という活動も重要ですが、精神面だけでは完全を期すことは出来ません。多くの工場でKYTは職場に定着していて、GMP同様、日常的に作業前TBM(Tool Box Meeting)で今日の作業予定とその作業にどんな危険が潜んでいるかをグループで話し合い、今日の安全重要ポイントを決め、全員で安全唱和し「何々しよう! ヨシ」「0災でいこう! ヨシ」と声を掛け合うことが出来ているものと思います。又、これは毎日の安全意識を高めるために重要です。これは前述したように、安全意識を日々高めることは重要ですが、これだけでは足りないことが近年明らかになってきました。KYTに物理科学的な根拠が見つからない事が問題で、更なる安全作業レベルを求める上で必要であることがわかってきました。一例が、Permit System(安全許可証システム)とその具体的なシステムであるLOTO(Lock and Tag)Systemです。これをリスクアセスメントで優先順位の高い作業を明確にした上で、ハード面とソフト面の対策をPermit SystemとLOTO Systemで施錠と表示を実施する事により、重大リスクの低減を図る手法となります。このようにHSEのグローバルスタンダードで管理されることの重要性が、サプライチェーンも巻き込んで従業員の安全を確保する為に必要である事が求められるようになりました。製薬工場の生産ラインやユーティリティ設備の管理をする上で、これらの運用が図られると、製薬工場のビジネスを継続する上で重要である事があるべき姿と言えるのでしょう。
国際化が進んで、欧米のリスクアセスメントが30年近く遅れて日本の行政や企業に必要性を求められてきています。サプライチェーンの信頼性確保が必要な時代になりました。国内の製薬工場では、サプライチェーンマネジメントが重要となることについて、意識が低く放置されている例が多く見られます。世界中の医薬品工場で使用されている圧空装置や油圧装置、そして電気設備などについては、生産機械の構成上、プロセスリスクマネジメントを廻して運用してゆかねば、生産業務に携わっている社員さん、従業員さんの健康安全と環境を守る事が出来ません。又、国際的にサプライチェーン関係が必然となっている今日、プロセスリスクマネジメントをサプライチェーンにも、社内同様、適切に運用されなければ、安定生産を継続しているとは言えない現状となりました。さて、圧空装置や油圧装置ですが、その物理的科学的機能を学ばずして安全管理は出来ません。エンジニアリング技術としては、大変高度な技術が必要です。技術レベルの低い技術者が、十分な時間と教育を受けず、現場に入る現実は変えてゆかねばなりません。特に、他の業種と比べて製薬工場の技術部門のレベルは、決して高くない事を受け入れて、企業として技術者の技術レベルを上げることが求められています。その安全を確保する為に運用が求められているのがLOTO(Lock Out & Tag Out)です。定義は以下の通りです。
ロックアウト…設備機器に供給されるエネルギー(動力)源または危険物質供給源を施錠することによって遮断すること
タグアウト…エネルギー(動力)源または危険物質供給源を遮断中に、遮断した装置の操作を禁止することを施錠や表示札などによって明示すること
LOTO… ロックアウト・タグアウトの略称
事業所のHSEレベルを高め、事業所内で働くすべての人と、サプライチェーンで働く人々の健康安全と地球環境保護を担保して、健全な業務を行うことの出来る、国際社会に貢献できる会社としての成長を目指すのがあるべき姿です。

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