ジェネリック医薬品の四方山話【第10回・最終回】

2018/03/02 その他

~デバイス・ジェネリック -単回使用医療機器の再製造- ~

 本連載も今回で最終回である。最終回はジェネリックといっても医薬品ではなく医療機器のジェネリック(デバイス・ジェネリック)で締めくくろう。
 使用済みの単回使用医療機器(SUD:Single Use Device)を、専門の医療機器製造販売業者が、洗浄・部品交換・再組立て・滅菌して再製造する新制度が、2017年7月から我が国でもスタートした。そして今年1月、関連企業が集まり単回使用医療機器再製造推進協議会という業界団体も国内でスタートした。
 これまで厚労省の再三にわたるSUD再使用の禁止の通知にもかかわらず、医療機関が院内で使用済みSUDを再滅菌し、再使用する不適切な事例が後を絶たなかった。これに対して厚労省が策定した基準に則り、製造販売業者が使用済みのSUDを再製造する新たな仕組みが導入された。SUD再製造品はオリジナル品と性能や耐久性、安全性において同等であることを当局が承認し、市場に出す仕組みだ。その価格はすでに欧米で行われているSUD再製造の事例から考えると、オリジナル品の半分ぐらいの価格と考えられる。
 こうした仕組みはちょうど医薬品におけるジェネリック医薬品に相当するので、SUDの再製造品は欧米では「デバイス・ジェネリック」とも呼ばれている。すでに米国やドイツでは2000年ごろからSUDの再製造がスタートしている。ようやく日本でもこの仕組みが上陸したといえる。
 我々はこうした制度を国内に導入するにあたり、欧米の調査をこれまで何度か実施してきた。実際にSUD再製造を行っている米国アリゾナ州のフェニックス市にあるストライカー・サステナビリテイ・ソリューション社を見学した。見学した工場では、使用済の神経生理電極(EP)カテーテルを洗浄し、必要に応じ分解し、部品交換を行い、オリジナル品と同等までに復元し、そしてその機能も同等であることを機能試験で確認していた(写真)。この現場を見て、やはり使用済のSUDを再使用するからには専門工場においてここまで行うべきと感じた。
 実は米国でも2000年ごろまでは現在の日本と同様に、EPカテーテルは院内滅菌して再使用していた。しかし、病院内での再処理は、滅菌方法の適正性の問題や感染リスクがあるため、1999年に米国会計検査院が、「院内再処理は患者に対する安全性の懸念があり、米国医薬食品局(FDA)は規制すべき」という勧告を行った。
 この勧告を受けて2000年以降FDAは、SUDの再製造を行う者に対して市販前届出(510(k))を義務づけた。510(k)では、再製造SUDに関して、オリジナル品で求められる情報に加えて、以下の追加情報を義務付けている。特に重要な情報はSUD再製造における洗浄、滅菌に関する情報およびSUD再製造の設計開発情報である「リバースエンジニアリング」情報等である。

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執筆者について

武藤 正樹

経歴 国際医療福祉大学大学院教授 医療経営管理分野責任者
1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年~1988年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)
政府委員としては、医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年~2011年)、中医協入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2012年~)、ジェネリック医薬品品質情報検討会委員(厚労省2008年~)
著書に「ジェネリック医薬品の新たなロードマップ」医学通信社2016年、「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる!」(医学通信社2015年)など。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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