医薬品モノづくり現場の履歴書【第1回】
本連載は、製薬企業での工場長経験者より、次世代を担う皆さんに贈る「生きた教科書」を目指します。マニュアルや計算式だけでは語れない現場のリアルな教訓をお伝えするため、経験談をベースに、関係者や特定ケースが分からないよう創作を交えた「読み物」としてお届けします。
また、本連載は異なるキャリアと専門性を持つ2人の元・工場長による二つのストーリーを交互に掲載します。
(1)『失敗から学ぶ現場学』(執筆者:南都下 史朗)
(2)『モノづくり人生の哲学』(執筆者:モノづくり伝道師)
アプローチは異なりますが、2人に共通するのは、モノづくり現場への「深い愛」と、プレッシャーの中で奮闘する皆さんへの「熱いエール」です。
この記事を読んだ後、隣のメンバーや、グループ内で意見交換するなど、コミュニケーションのツールとして利用いただけると嬉しく思います。
初回は『失敗から学ぶ現場学』からスタートいたします。
失敗から学ぶ現場学
ケース01:入社一年目 配管図面の失敗!
若手技術者・研究者・現場担当者の皆様へ、毎日の業務、本当にお疲れ様です。
医薬品という人々の命と健康に直結する製品を扱う以上、私たちの職場には常に「絶対に間違えてはいけない」という独特の緊張感が漂っています。厳格なGMPの遵守、無菌状態の維持、一ミリの妥協も許されない品質管理。そんなプレッシャーの中で、時には押しつぶされそうになったり、「もし失敗したらどうしよう」と足がすくんだりすることもあるのではないでしょうか。
今回は、皆様に少しでも肩の力を抜き、前向きな気持ちで明日からの仕事に向かってもらうため、ある製薬企業の技術部門で起きたエピソードを、一つの物語としてお届けします(創作も含めております)。
これは、今では現場のリーダーとして活躍するある技術者が、入社一年目の「新人」だった頃に経験した、苦くも温かい失敗と成長の記録です。
完璧だと思っていた「はじめての設計図」
入社してようやく半年が過ぎ、会社の空気にも少しずつ慣れてきた秋のこと。新人だった私に、初めて「メイン担当」としての仕事が舞い込みました。それは、製剤棟における、一部のユーティリティ配管(製造用水やエアーなどを送る管)の振替え設計でした。
「ついに自分も、一人前のエンジニアとして図面を描くのか!」
期待に胸を膨らませながら、私はCADソフトに向かいました。医薬品工場の配管は、液溜まりを防ぐための勾配や、サニタリー(衛生)仕様のバルブの配置など、考慮すべき条件が山のようにあります。私はマニュアルに従い、自分なりにベストと思える配管図を作成しました。
図面は無事に承認され、いよいよ現場での施工がスタート。自分の引いた線が、実際の工場の一部として形になっていく。その喜びと、どこか間違えていたらどうしようという不安でドキドキしていました。
現場からの電話と、血の気が引く音
しかし、その高揚感は一本の電話によって粉々に打ち砕かれます。
「おい、ちょっとすぐ現場に来てくれ!」
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