製薬事業所のペストコントロール【第6回】

査察・監査への対応
 ー査察・監査に於ける指摘事例

 海外当局による査察(GMP調査)や取引先による監査(GMP/GDP)での指摘は、製薬事業所にとっては悩ましい指摘であると同時に、構築すべきペストコントロールプログラムの在り方のヒントを示してくれる。前回に続き、これまでの主な指摘例を事例解説しながら、ペストコントロールプログラムの在り方を考えていきたい。

ケース⑥ 倉庫でのトラップ配置、点検の間隔の根拠説明が出来ず是正を求められた監査事例

監査員の指摘:
1.トラップ配置箇所の設定根拠が示されない。
2.「一カ月」という点検の間隔を決定した根拠が存在しない

取引先からの監査に於いて、医薬品保管倉庫で指摘されたGDP関連のケースである。指摘の1.は、ケース①と同じ指摘であるので、同ケースを参照頂きたい。大まかには、対象昆虫類の当該施設への侵入と繁殖のメカニズム(侵入と繁殖のリスク)を整理したうえで、侵入ルート上、或いは繁殖リスクがある箇所に配置していることを説明することである。
 2.の指摘は、倉庫の防虫点検の間隔の妥当性についての指摘となっている。倉庫に配置されたトラップ類(ライトトラップ、床配置トラップなど)を含め、ペストコントロールプログラムに於いては、点検の間隔が規定されているプログラムが殆どである。当該の規定に於いて、点検の間隔が一ヶ月と定められていたが、「一ヶ月」と決めた科学的根拠が示されておらず、また関連する質問、“なにゆえ1カ月間隔なのか?”という質問にも答えられず指摘に繋がった。

 点検の間隔の根拠としては、例えば、昆虫の生態情報を利用する方法が考えられる。ここで言う生態情報とは、当該昆虫種が卵から成虫に成長し、次世代を生むまでのライフサイクルに係る情報を指す。ライフサイクルは昆虫類によって異なるので、対象となる昆虫種ごとに文献や書籍などの学術情報にアクセスして正確な情報を収集する必要がある。ライフサイクルは昆虫種によって、1週間弱から1、2年必要なものまで存在するが、実際に捕獲される昆虫種ごとに調査収集してみると、その多くが4週間から5週間であることが分かる。仮に、当該昆虫類のライフサイクルが4週間から5週間であるならば、点検間隔を1カ月と規定する根拠となるであろう。

 

 

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